省エネ法が抜本改正! 再エネ活用を促す新たな制度も――事業者の対応は何が変わる?【前編】:法制度・規制(3/3 ページ)
2022年5月に改正が決まった省エネ法。新たに太陽光などの再エネや、アンモニアなどの「非化石エネルギー」の利用や、デマンドレスポンスなどの需要家側の対策に関する内容が盛り込まれるなど、対象事業者にとっては“抜本的な改正”となりそうだ。本稿では2023年4月の施行に向けて進められている詳細な制度設計の方向性と概要を解説する。
非化石エネルギーに対する補正
改正省エネ法は、省エネの深掘りと、非化石エネルギーへの転換の同時達成を目的とすることから、エネルギー消費原単位等の算定に当たっては一定の配慮が必要とされる。
特定事業者が燃料の一部を化石から非化石(例えばバイオマス)に転換する場合、燃焼効率の悪化から「増エネ」となるおそれがあるため、化石燃料を使い続けようというインセンティブが働くこととなる。
エネ庁の試算によると、石炭からバイオマス燃料への転換の場合、バイオマス燃料の1%混焼で発電効率が0.08%悪化することから、専焼(混焼100%)による効率悪化は最大でも2割程度と想定している。
よって、非化石エネルギー(この場合、バイオマス)への転換を阻害しないため、原油換算エネルギー使用量(kl)に「補正係数:0.8」を乗じることにより、エネルギー使用量を補正することとする。
補正の対象は、黒液・廃材、水素、アンモニア等の非化石燃料であるが、それらの補正係数(α<1)の具体値は今後の検討とされる。
なお、自家発太陽光発電については、電気そのもののエネルギー量(3.6MJ/kWh)で換算することとする。
後編では、新たに義務付けられる計画・報告書への非化石エネルギーの利用目標およびその算定方法、自家発電再エネ電気の取り扱いなどについて解説する(後編は2022年6月20日に掲載予定)。
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