省エネ法が抜本改正! 再エネ活用を促す新たな制度も――事業者の対応は何が変わる?【後編】:法制度・規制(3/3 ページ)
2022年5月に改正が決まった省エネ法の概要について解説する本稿。後編となる今回は、新たに義務付けられる計画・報告書への非化石エネルギーの利用目標およびその算定方法、自家発電再エネ電気の取り扱いなどについて解説する。
最適化原単位の算出方法は?
電気のリアルタイムの需給バランス維持のためには、特定事業者による上げ/下げDRは当然ながら時間帯別(30分単位)に実施することが望ましい。
よって特定事業者による電気使用量(MJ)の算出に際しても、本来は時間別の電気換算係数(MJ/kWh)に当該時間帯の電気使用量(kWh)を乗じた「電気需要最適化原単位」を報告することが望ましい。
しかしながら、改正省エネ法の施行当初からすべての特定事業者がこれに対応できるとは限らないことから、月別の算定・報告も事業者において選択可能とする。
昨年度までの出力制御等の実績値をベースとする場合、月別の差異が非常に小さいことから、需要最適化に対する事業者のインセンティブを高めるために、2〜5倍程度の政策的な「重み付け」を行うことが提案されている。
重み付けが「5倍」と聞くと大きな印象があるが、実際には、重み付けをしない場合と比較すると、両者の電気使用量(MJ)の差は1%未満の小さなものである。
小売電気事業者に対する措置
特定事業者(需要家)が自らの電気需要を最適化するためには、電気事業者(小売電気事業者や送配電事業者)から需要家に対して、適切な情報提供や需要最適化を促す料金メニュー等の提示が必要となる。
このため、一定規模以上の小売電気事業者等に対しては、例えばダイナミックプライシング等の電気料金メニューを設けること、もしくはこれに関する「計画」を作成・公表することを求めることとする。
従来、省エネ法と言えば、小売電気事業者とはそれほど強い関係性は無かったが、改正省エネ法により、再エネメニューやDRメニューの提供や、非化石証書の販売など、需要家との接点が大きく増加することとなった。
施行に向けた制度の具体化を一層注視すべきであろう。
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