「ペロブスカイト+CIGS」のタンデム型太陽電池、東大が世界最高の変換効率26.2%:太陽光
東京大学の研究グループが、ペロブスカイトとCIGSを組み合わせたタンデム太陽電池として、世界最高性能となる変換効率26.2%を達成したと発表した。
東京大学の研究グループは2022年7月12日、ペロブスカイト/CIGSタンデム太陽電池として世界最高性能となる変換効率26.2%を達成したと発表した。
ペロブスカイト太陽電池は、溶液を塗布するだけで安価に製造でき、現在主流のシリコン系の太陽電池より高い変換効率が期待できるため、次世代の太陽電池として世界中で研究開発が加速している。軽量フィルム基板にも形成できることから、軽量かつフレキシブルな太陽電池として利用できるのもメリットの一つだ。
ペロブスカイト太陽電池の現状での世界最高効率は25%台だが、電動航空機、電気自動車、ドローンなどへの用途拡大を目指すには、軽量かつフレキシブルな形状で、変換効率30%台を目指すことが理想とされている。そこで東京大学の研究グループでは、ペロブスカイト太陽電池とCIGS太陽電池を組み合わせたタンデム太陽電池の開発に取り組んだ。
タンデム太陽電池とは、2種類以上の異なる太陽電池を積層した太陽電池のこと。通常の太陽電池の変換効率の理論的な上限値は33%程度であるのに対し、タンデム型構造にすることで、45%を以上の変換効率を実現可能とされている。
研究グループではペロブスカイト太陽電池との組み合わせで選択したのが、CIGS太陽電池だ。光吸収材料にCu(銅)、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Se(セレン)などで構成する太陽電池。一般的なシリコン太陽電池の100分の1程度の材料で製造可能という特徴がある。フレキシブル化も可能だ。
ただし、ペロブスカイト太陽電池を、タンデム太陽電池に用いるためには、従来の金属電極を、ITO(酸化インジウムスズ)などの透明導電層に置き換える必要があった。そこで研究グループでは、ペロブスカイト層にダメージを与えずに高性能なITOを積層する手法を開発し、高い性能を維持した状態で半透明なペロブスカイト太陽電池を作成することに成功。半透明ペロブスカイト太陽電池としては世界最高性能となる変換効率19.5%を達成した。
さらにこの高効率な半透明ペロブスカイト太陽電池とCIGS太陽電池を組み合わせる事で、26.2%の変換効率を有するメカニカルスタックタンデム太陽電池を実現したとしている。
研究グループでは今後、今回の成果を発展させ、さらなる変換効率の改善により変換効率30%を超える軽量フレキシブル太陽電池の開発を目指すとしている。
関連記事
- 新型・次世代太陽電池の世界市場、2035年に8300億円規模に成長
調査会社の富士経済は2022年4月20日、有機薄膜太陽電池やペロブスカイト太陽電池などの新型・次世代太陽電池の世界市場に関する調査結果を発表した。2035年の市場規模は、2021年比で22.6倍の8300億円に拡大すると予測している。 - ペロブスカイト太陽電池、スズ系で効率7%と「再現性」を両立
京都大学と大阪大学の研究グループは、高品質で再現性に優れるスズ系ペロブスカイト半導体膜の成膜法を開発。この手法により、光電変換効率が7%を上回るペロブスカイト太陽電池の作製が可能となるという。 - 東芝が「曲がる」太陽電池で世界最高の変換効率、フィルム型ペロブスカイトで
東芝がフィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュールでエネルギー変換効率15.1%を達成したと発表した。703cm2のモジュールで、このサイズにおける変換効率としては世界最高(同社)としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.