託送料金は上昇の見通し、レベニューキャップ制度開始へ電力10社が収支計画を提出:法制度・規制(4/4 ページ)
一般送配電事業者が一定期間ごとに収入上限を決める「レベニューキャップ制度」が2023年4月からスタートする。各社の収入上限が、今後の託送料金の算定基準となる仕組みだ。この新制度に向け、一般送配電事業者10社が国に事業計画を提出し、その審査・検証がスタートした。
「設備拡充計画」と「設備保全計画」
一般送配電事業者は、再エネ導入拡大への対応やレジリエンス強化のため、地域間連系線等の設備増強や運用の高度化に向けた設備拡充計画を作成している。
例えば北電NWでは、再エネの導入拡大に向けた投資として、新々北本連系設備や系統側蓄電池、ダイナミックレーティングの導入、ローカル系統増強等が計画されており、次世代スマートメーターを加えると、合計1,072億円に上る。
地域間連系線や基幹系統の拡充については、広域機関で検討を進めているマスタープランと整合的であることが求められる。現時点、マスタープラン中間整理に記された中部・北陸・関西の3社による「中地域交流ループ」の開発のみが、第一規制期間中に先行着手される計画とされている。
ローカル系統については、費用便益評価(B/C)に基づき、便益が費用を上回る設備(B/C>1)については「プッシュ型」で系統を増強する計画としており、これは各社の次世代投資計画として計上されている。
これに対して「設備保全計画」では、高経年化が進む鉄塔等の送配電設備を経済合理的に修繕、取替することを計画する。
今後、高度経済成長期以降に建設した、大量の送配電設備が更新時期を迎えることとなる。一般送配電事業者は「高経年化設備更新ガイドライン」を参考に設備リスクを定量化したうえで、工事量を平準化することを計画している。
また東京電力パワーグリッド(PG)等では、再エネ連系量の拡大と高経年化設備対策の同時達成を目指した計画も進められている。高経年既存設備の単純なリプレースではなく、「系統スリム化」と「再エネ連系量拡大」を達成する新たなプッシュ型の増強工事を計画している。
一般送配電事業者の「効率化計画」
一般送配電事業者はこれまでも、いわゆるカイゼン活動や発注方法の工夫等により、コスト低減に努めてきたが、レベニューキャップの第一規制期間に向けては、さらなる効率化を計画している。
具体的には、一般送配電事業者間の物品の仕様統一の拡大や、DX・デジタル技術の活用、VA(バリューアナリシス)の推進、系統運用の広域化などが計画されている。
今後、料金制度専門会合では費用項目ごとに、統計手法等を用いた10社比較を行うなどにより、各一般送配電事業者における収入の見通しの適切性について検証を行う予定である。
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