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都市ガスを脱炭素化する「メタネーション」、国内での普及に向けた課題は?エネルギー管理(2/4 ページ)

水素とCO2を原料としたメタン合成技術である「メタネーション」。再エネ電力を利用することで都市ガスの脱炭素化につながるとして、今後の普及拡大が期待されている。メタネーション技術の普及拡大に向けた国内外の動向と、実用化における課題をまとめた。

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合成メタンの需要量創出に必要な再エネ電力量は?

 図1から2050年の合成メタン需要量を約700億Nm3と仮定すると、その原料となる水素は2,800億Nm3程度必要となる。

 水素1 Nm3を水電解で製造するには約5kWhの電気を消費するため、2050年時点では合成メタンの製造だけで、約1.42兆kWhの再エネ電力が必要となる。

 ところが、2050年時点における日本の総発電電力量(再エネ以外を含む)は1.05兆kWh~1.5兆kWhと試算されており、これほど大量の再エネ電力由来水素を調達するには、国内だけでなく、海外でのメタネーション実施が不可欠と考えられている。

 また合成メタンの製造コストの内訳としては図3のように、半分以上が水電解・電力コストとなると推計されている。

 IEA報告書では、2050年時点の世界の再エネ電力コストは太陽光発電で2.0〜3.3円/kWh、陸上風力で3.9〜5.2円/kWh、洋上風力で3.3〜5.9円/kWhと想定されている。

 よって、製造コスト・再エネ電力価格の観点からも、海外でのメタネーション実施が期待されている。


図3.合成メタン製造コストの低減イメージ 出所:日本ガス協会

合成メタンの流通と環境価値の扱い

 合成メタンはLNG・天然ガスの既存インフラをそのまま活用できることがメリットであるが、特に海外で製造された合成メタンを輸入する場合、その流通段階では在来型のLNGと物理的に混合した形で流通することが想定される。


図4.合成メタンと在来型LNGの流通 出所:海外メタネーション事業実現TF

 このため、需要家や小売事業者が合成メタンの環境価値を適切に利用するためには、混合した合成メタンと天然ガス(LNG)を区別するための認証制度や、合成メタンの環境価値を移転・取引する仕組みの整備が必要となる。

 電力分野ではすでに非化石証書やJ-クレジット制度等が存在するが、ガスではどのような証書もしくはクレジット制度が適しているか、今後の検討とされる。

 日本ガス協会では、合成メタン証書の発行により、合成メタンであること及びその量、環境価値の移転取引と温対法算定・報告・公表制度への反映等を検討することを提案している。

 合成メタンは、回収したCO2を利用(CCU:Carbon dioxide Capture and Utilization)して製造する、カーボンリサイクル燃料の一つとして位置付けられている。しかし、合成メタンを含むカーボンリサイクル燃料の燃焼時のCO2排出量をどのようにカウントするかは、現時点で明確に定まっていない。

 メタネーション推進官民協議会の下の「CO2カウントに関するタスクフォース」(TF)では、「国レベル」と「企業活動レベル」で検討を行い、中間整理を公表している。

 まず国レベルでは、IPCCガイドラインに基づく国家温室効果ガスインベントリ作成の考え方に則れば、海外で回収されたCO2を用いて海外で製造された合成メタンを輸入し、日本国内で利用した場合、当該合成メタンの燃焼に伴うCO2排出は日本国の排出として報告することとなる。

 また国際的な削減クレジットの移転手段として、二国間クレジット制度(JCM)の活用が模索されている段階である。

 企業活動レベルにおいても、CO2カウントの在り方に関しては原排出者(回収者)側と合成メタンの利用者側で、意見は対立することとなるため、図5のような4つの案が検討された。


図5.企業活動レベルでの合成メタンCO2カウント 出所:CO2カウントに関するTF

 この結果、TF中間整理では案1のように原排出者(回収)側でカウントし、利用者側で排出ゼロとすることが提言された。

 この整理は、利用者側で合成メタンを利用するインセンティブを最大化させるものであるが、原排出者側は自然体では、わざわざ費用を掛けてCO2を回収するインセンティブは無い。

 このためTF中間整理では、同時に、原排出者にCO2回収のインセンティブを付与する補完的な仕組みの創設も重要としている。

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