既存の太陽光発電の規制を緩和、蓄電池併設とパネル交換・増設ルールが見直しへ:太陽光(4/4 ページ)
FIT制度の開始以降、国内で急速に導入が広がった太陽光発電。政府はこうした既設の太陽光発電の有効利用と、さらなる導入拡大に向けて、蓄電池の併設や太陽光パネルの張り替え・増設に関する規制を緩和する方針だ。
低圧太陽光もFIP制度の対象に
現在FIP制度では、太陽光発電は2024年度に250kW以上はFIPのみが選択可能、50kW以上においてFIPを自主的に選択可能とされている。
現在FIT事業用太陽光発電では、導入件数の95%(63万件)、導入容量の34%(1,715万kW)を低圧太陽光(10〜50kW)が占めており、これら低圧太陽光の市場統合や長期電源化が求められている。
このため、一定の要件を前提として、低圧太陽光についても新規認定案件・既認定案件いずれもFIP制度を選択可能とすることが提案された。具体的な要件等は調達価格等算定委員会で検討される。
要件の例としては、
- 電気事業法上のアグリゲーター(特定卸供給事業者)や小売電気事業者に対して、相対契約により直接供給を行うこと
- 当該発電事業者の保有する認定発電設備の出力合計値が一定規模以上であること
などが挙げられている。
アグリゲーター等が小規模多数の低圧太陽光をまとめて管理することにより、適正な事業規律の確保による地域社会との共生や、長期電源化が進むことが期待される。
太陽光パネルの張り替え・増設
現在のFIT・FIPのルールでは国民負担の増大を抑止する観点から、事後的に太陽電池の出力が「3kW以上または3%以上」増加する際には、設備全体の調達価格/基準価格が最新価格へ変更される。
太陽光パネルの一部が破損・故障することは一般的であるが、太陽光パネル自体の性能が向上しているため、単純に最新のパネルに張り替えようとすると、「3kW以上または3%以上増加」の閾値に抵触することとなる。古いパネルが製造販売終了となっている場合、発電事業者はパネルの交換すら行うことが出来ず、次第に太陽光発電所全体の出力が低下するという事象が全国的に生じていた。
これは再エネ電力の導入拡大に逆行することとなる。
既設の再エネ電源はすでに土地や系統接続容量を確保していることから、その長期的有効活用は重要である。よって再エネ大量導入小委では、国民負担の増大は抑止しながら、太陽光パネルの張り替え・増設を促すように現行ルールを見直すこととした。
具体的には、張り替え・増設をする際に、認定出力のうち当初設備相当分は当初の調達価格維持することとして、増出力分相当は「十分に低い価格」を適用することとする。
既設電源は新たな系統接続費用等が不要であることから、最新の調達価格からこれら費用を差し引いたものが、「十分に低い価格」とされる。
具体的な価格等は、今後、調達価格等算定委員会において検討される。図7の例の場合、増設前の収入は2,000円/hであるが、増設後は2,200円/hへと1割増加する。
また、パネルが張り替え・増設されるということは、発電事業者にはその増設等パネルを十分な長期間利用しようとするインセンティブが働くため、当初の発電所全体が長期間運転される蓋然性が高まると考えられる。よって、これは既設電源の長期電源化にも有効なルール変更であると言える。
ただしFIT・FIPの調達期間・交付期間は、パネル張り替え・増設後の設備も含めて、当初設備の調達期間等が維持される。
今回の「蓄電池の併設」、「低圧太陽光のFIP対象化」、「太陽光パネル張り替え・増設」のルール変更はそれぞれ単独でも有効な措置であるが、これらを組み合わせることにより、国民負担の抑制を前提とした再エネ導入拡大と、発電事業者の収益性向上の両立が実現することが期待される。
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