「再エネ電力」の定義で議論紛糾、まとまらない「環境配慮契約」の改定方針:法制度・規制(5/5 ページ)
国の施設などの公共施設における再エネ利用の促進に向けて、環境配慮契約の制度改定に向けた議論が進んでいる。しかし「再エネ電力」の定義や、大型水力の扱いなどについて意見が割れており、今後の動向が注目される。現状の改定方針と今後の論点についてまとめた。
環境配慮契約未実施機関への対応
環境配慮契約は、現在すべての国等の機関で実施されているわけではなく、高圧・特高では件数ベースで約86%、電力量ベースで約83%の実施率、低圧では件数ベースで約46%、電力量ベースで約74%の実施率に留まっている。
テナントであること等を理由として、環境配慮契約の実施が不可能というケースも一部で存在するものの、環境配慮契約が実施可能であるにも関わらず未実施の公共機関も多く存在する。
このため環境省では、環境配慮契約の実施を促すため、未実施の機関個別の具体的名称やその理由等を2022年度から公表開始した。
環境省では、先進事例・優良事例の情報提供のほか、Web上で小売電気事業者による再エネ電力メニューの自主的な登録が可能となる仕組みを構築することを検討予定である。
なお従来、非化石証書を購入できるのは小売電気事業者に限られていたため、需要家は電気とセットで非化石証書を購入せざるを得ず、再エネ電力の調達機会は限られていた。
ところが制度変更により、2021年11月以降は需要家も直接(もしくは仲介事業者を介して)、非化石証書を購入できるようになった(ただしグリーン電力証書やJ-クレジットは従来から直接調達可能であった)。
仮に非化石証書等の直接調達を、広義の環境配慮契約電気供給と位置付けるならば、すべての国等機関は、環境配慮契約を実施可能といえる。
むしろ現在の姿は、電気と非化石証書をセットで小売電気事業者から購入している需要家が、直接・仲介により非化石証書を購入するインセンティブを削ぐかたちとなっている。再エネ電力の多様な取引形態の実現に向けて、一定の制度見直しが望ましいと考えられる。
環境配慮契約法電力専門委員会は、今年度に3回の会合開催が予定されているが、残された会合はあと1回のみである。しかし、上述のように現時点、今年度も大型水力に関して委員の意見は割れたままである。
今年度中に合意し、2023年度から新制度が開始されること、再エネ電力が実効的に調達されることを期待する。
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