洋上風力をめぐる入札制度の見直し、「迅速性評価」や“総取り防止”の仕組みを導入:自然エネルギー(4/4 ページ)
国内における洋上風力発電の実施事業者を決める入札制度。2021年のいわゆる「第1ラウンド公募」の結果などを受け、その制度の見直しが進んでいる。政府では今後、入札を延期している3海域での入札について、事業の迅速性評価などの仕組みを導入した新たな公募占用指針の策定を行う計画だ。その方向性を解説する。
残った促進区域の決定方法は?
それでは残る促進区域Bはどのように決定されるのか。港湾はもうb港しか残されていない(図7)。
促進区域Bでは、暫定的に評価点1位となった公募参加者3に対して、利用重複を避けたb港利用計画の再提出を認め、再評価を行う。ここで元々b港利用計画としていた3位の公募参加者1と比較し、最終的に評価点の高い計画が選定されることとなる。
この方式の場合、計画の再提出・再評価の期間として3〜4か月程度掛かると想定されており、事業者選定の遅れは、選定後の風況・海底地盤調査等の日程にも影響を与え、運転開始時期がさらに遅れることも懸念されている。
これは、迅速性を求めた公募見直しの趣旨に逆行するおそれもある。
現時点で「海洋再生可能エネルギー発電設備等拠点港湾」として指定済みの港湾は、能代港、秋田港、鹿島港、北九州港の4つに限られることが、このような重複が生じる一因となっているため、速やかな指定港湾の増加が期待される。
複数区域同時公募時の落札制限
国内の洋上風力産業が黎明期にあり、多数の事業者へ参入機会を与える観点から、多数の区域において公募を実施する際は、落札数に制限を設けることとする。
つまり、たとえ最安値であったとしても1社総取りは許さない仕組みとなる。
具体的には、公募参加者1者が選定された促進区域の系統容量合計(もしくは発電設備容量合計)が1GW以上となった場合、落札上限に達したと判断し、当該参加者による残る応札海域の応札提案は無効とする。
今後のスケジュールとしては、11月〜12月に公募占用指針案に関するパブリックコメントを実施し、年内を目処に第2ラウンド公募占用指針の公表、公募の開始が予定されている。
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