検索
ニュース

「水素・アンモニア」の低炭素基準を設定へ――どこからグリーン・ブルーなのかエネルギー管理(1/4 ページ)

燃焼時にCO2を排出しないクリーンな次世代燃料として期待されている「水素・アンモニア」。しかしその製造方法などによって、トータルでのCO2排出量には差が生まれている。そこで政府では水素やアンモニアの低炭素基準を設定する方針だ。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

 燃焼時点でCO2を排出することのない水素・アンモニアは脱炭素燃料と位置付けられるが、その由来する原料生産や改質工程においては、一定のCO2を排出するものである。

 世界全体のカーボンニュートラル実現のためには、燃料消費国(日本等)のCO2排出だけでなく、ライフサイクル全体として低・脱炭素であることが求められることから、世界各国において、これら燃料の低炭素基準(CO2閾値)が設定されている。

 また国内では、水素・アンモニアの商用サプライチェーン構築の支援策として、FIP制度に類似した「CfD(Contract for Difference)」の導入が予定されている。

 国による支援対象としては、原則「グリーン(再エネ電力による水電解方式で得られた水素)」または「ブルー(化石燃料由来でCO2はCCS)」水素の案件が対象とされる。

 これらの制度設計詳細について、資源エネルギー庁の水素政策小委員会・アンモニア等脱炭素燃料政策小委員会の合同会議において、検討が進められている。

水素・アンモニアの低炭素基準

 カーボンニュートラル実現に向けて、多大な労力をかけて化石燃料から転換するという第一目的に照らせば、水素・アンモニアのライフサイクルCO2(GHG)排出量は、少なければ少ないほど望ましいと言える。

 他方、当面はその製造コストや流通インフラ構築費用の高さを踏まえれば、現状の化石燃料と比べてかなり高価となることが想定されている。

 まずは水素・アンモニアの需要と供給の双方を同時に拡大することが重要であることから、CO2排出量(炭素強度)とコストのバランスも考慮する必要があると考えられる。

 水素等は世界的にも脱炭素燃料として、今後の利用拡大が想定されていることから、各国ではすでに一定の低炭素基準値が設けられている。

 このため、水素等関連技術そのものや、それを利用する日本企業の国際競争力確保の観点からは、国際的に遜色のないCO2閾値を設定することが必要とされる。


表1.欧米の低炭素水素基準の例(※英国とEU REDのオリジナル単位はkgCO2/MJ) 出所:水素バリューチェーン推進協議会

 表1で例示した欧米の低炭素水素基準は、その目的や用途はさまざまであり、必ずしも直接的に比較できるものとはなっていないほか、今後の技術開発等を見込んで一定期間以内(例えば5年後)に基準値が見直されるものである。

 EUのRED(Renewable Energy Directive)は、エネルギー供給事業者の再エネ供給義務を定めたものであるため、一定の強制力を持つ基準値である。またCO2排出量の算定範囲や算定方法に関しても、現時点では国際的な統一には至っていない。

 基準値の算定範囲としては、図2のようにWell to Gate、Well to Tank、Well to Wheelなどの考え方がある。例えばWell to Gateでは、Well(井戸元=原料生産)からGate(=水素製造装置の出口)までが算定範囲とされる。


図1.基準値の算定範囲の例 出所:水素バリューチェーン推進協議会

 水素バリューチェーン推進協議会ではWell to Gateの定義として、

  • CCS(CO2輸送、圧入)に伴うGHG排出
  • 原料生産で用いる燃料及び、電力消費に伴うGHG排出(Scope3)
  • 原料の輸送に伴うGHG排出

を含み、水素キャリアへの変換と水素またはキャリアの輸送は含めない、としている。

       | 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る