2023年度に始まる「長期脱炭素電源オークション」、初回募集は400万kWに:エネルギー管理(4/4 ページ)
脱炭素電源への新規投資の促進を目的に2023年度から始まる「長期脱炭素電源オークション」。その内容を検討する作業部会で、初回の募集容量や具体的な入札に関するルールの詳細が明らかになった。
落札案件は全て監視し、入札価格の正当性を確認
本制度措置は巨額の電源投資を対象としており、国民負担の最小化を図ることが必要であるため、電力・ガス取引監視等委員会は落札案件(仮決定段階)の全件を監視し、価格を確認することとしている。
監視ルールとしては、応札事業者がその建設費等において競争入札や相見積を行っている場合には、原則その金額が適切な金額と認められる。
他方、競争入札や相見積が未実施である場合や特命発注を行う場合には、不当に高額な金額となっていないことを確認する。
具体的には、「直近の発電コスト検証の諸元等の上限価格の算定にあたって用いた諸元の2倍の水準」を超える予定価格・特命発注部分は、合理的な理由があると認められた場合を除き、減額する。
このように詳細な確認が必要であることから、約定結果公表時期は、入札期間終了時点から3ヶ月後を目途とする。
一発電所の複数プラントによる入札
大規模な発電所の場合、同じ敷地内に複数の発電プラントを抱えることが一般的である。よって、発電所内の1プラントは新設・リプレースして、また別のプラントでは既設電源の改修を行うケースも想定されるが、図7のように本制度の対象部分は大きく異なることとなる。
よってこのような場合は、共用設備の建設費を適切な比率で按分して入札価格に織り込むことにより、プラントごとに別々の入札を行うこととする。
オークション落札者は、当該電源の運転開始後にkWh収入等の他市場収入の9割を還付する必要があるため、プラントごとに電力メーターを設置することが求められる。
なおこのような事業者では、片方だけが落札した場合は共用設備の建設費を賄うことが出来ないため、「同年度のオークションに入札した特定の別のプラントが不落札となった場合は、自動的に不落札となる」といった「同時落札条件」を付けることが認められる。
また燃料基地のような共用設備は同一発電所内だけでなく、近隣の自社/他社発電所とも共同利用することも想定される。よって燃料基地を共用設備とするケースに限り、異なる場所にある複数の発電所のプラントで同時落札条件付の入札を行うことも認められる。
調整機能の具備
現行容量市場では、入札時点で調整機能の有無を申告し、調整機能が具備されている電源については余力活用契約の締結がリクワイアメントとされるが、調整機能を具備すること自体はリクワイアメントではない。
他方、長期脱炭素電源オークションは脱炭素電源の新設もしくは改修投資を促進する制度であるため、その投資時点で本来あるべき機能を具備することは重要である。
このため本制度では、火力(水素・アンモニア混焼を含む)・揚水・蓄電池については、調整機能の具備を求めることとする。火力電源ではすでに、送配電事業者の系統連系技術要件において調整機能の具備が求められているが、今後は揚水・蓄電池もその対象となる。
今回、オークション初回2023年度の募集量が決定されたが、多様な事業者が積極的に電源投資を行いやすい環境整備が進められることを期待したい。
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