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脱炭素技術として期待の「CO2回収・貯留」、コストは1案件で1兆円超のケースも法制度・規制(2/3 ページ)

カーボンニュートラルに貢献する次世代の技術として期待されているCO2回収・貯留技術(CCS)。CCSの導入を検討する政府の委員会で、現状および将来のコストに関する情報が公開された。

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CCSのコスト試算(発電コスト検証WG)

 脱炭素エネルギー技術にはCCSだけでなく再エネや水素等のさまざまな候補があり、コスト効率的にカーボンニュートラルを実現するためには、技術中立的な検討が必要となる。

 CCSのプロセスは主に、CO2の「分離」、「回収」、「輸送」、「貯留」、「モニタリング」から構成されており、最終的には設備の廃棄も含めた、ライフサイクル全体での設備費・運転費等を検証する必要がある。

 2021年8月に取りまとめられた発電コスト検証ワーキンググループ(WG)の報告書では、モデルプラント方式によるさまざまな電源コストが示されている。


表1.電源種別・kW別の建設費の金額イメージ(単位:億円) 出所:制度検討作業部会

 例えばCCS付き石炭火力のモデルプラント(設備容量70万kW、設備利用率70%、稼働年数40年)の場合、CCS費用総額は約1,755億円と試算されている。

 この試算では、輸送距離20kmの陸上パイプラインや、陸上施設から傾斜井を通して海底地下へ年間285万トンのCO2貯留を想定している。

RITEによるCCSコスト試算

 地球環境産業技術研究機構(RITE)は第3回「CCS 事業コスト・実施スキーム検討ワーキンググループ(WG)」で、詳細なCCSバリューチェーンコストの試算を報告している。

 CCS事業の設備構成としては、図2の「パイプライン輸送50km+陸上坑口」ケースのほか、「パイプライン輸送100km+海上坑口(着底)」ケースの試算を行っている。

 いずれの試算も、土地の制約や土地代・土地使用料・土地の整備費、地下性状、その他補償費等は考慮していない。

 プロジェクトは操業期間(40年)+廃坑後管理(20年)、年間CO2回収量は100万トンと300万トンの2ケースを試算している。


図2.「パイプライン輸送50km+陸上坑口」のCCS事業 出所:RITE

 この試算の結果、石炭燃焼排ガス(CO2濃度12〜13%程度)からのCCSの場合(表2)、CCSライフサイクルに要する総費用は約4,100億円〜1兆1,300億円となった。なお一般的に、CO2濃度が高い排出源のほうがCO2分離回収コストは安くなる。

 LNG火力からのCCSの場合、LNG燃焼排ガスのCO2濃度が3〜4%と低く、CO2分離回収にエネルギーを要するため、CO2分離回収費用は5,140億円〜1兆4,457億円と、石炭の2倍以上となる。分離回収以降の費用は石炭と同額である。


表2. CCS事業のライフサイクルコスト(石炭火力)試算例 出所:RITE

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