事業用太陽光発電のFIT/FIP入札、2023年度の変更点とスケジュール総まとめ:太陽光(4/4 ページ)
FIT/FIP制度の対象となる事業用太陽光発電について、2023年度の入札等のスケジュール・概要が公開された。インボイス制度や託送料金発電側課金の取り扱いなど、2023年度から新たに始まる制度への対応方針も押さえておきたいポイントだ。
インボイス制度の導入に伴う消費税の取り扱いい
2023年10月1日より、消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入される。インボイス制度では、税務署に申請して登録を受けた課税事業者である「適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)」が交付する「適格請求書(インボイス)」等の保存が仕入税額控除の要件となる。
FIT制度においてインボイス制度開始後は、買取義務者(※現在は一般送配電事業者)はFIT認定事業者へ支払う買取価格のうち、インボイス発行事業者との取引についてのみ仕入税額控除が可能となる。(※仕入れ(買取)の事実を記載した帳簿およびインボイスの保存等が要件)
インボイスを発行できない免税事業者などとの取引において、買取義務者はインボイスを取得できないため、当該取引分の仕入税額控除ができない。
これまでFIT調達価格は、消費税の税率変更の可能性を想定し、原則、外税方式としつつ、消費税納税義務のない一般消費者が主な認定事業者となる10kW未満の太陽光発電(余剰買取)については、内税方式とされていた。
インボイス制度導入後、買取義務者に不当に消費税負担が生じることを避けるため、2024年度以降のFIT調達価格については、その電源種や規模によらず、以下のとおり設定することとする。
- インボイス発行事業者(課税事業者):外税方式
- 非インボイス発行事業者(免税事業者):内税方式
なお、インボイス発行事業者/非インボイス発行事業者の該当が変わる場合には、上記のとおり消費税の取り扱いいも変更する。
託送料金発電側課金の考慮
託送料金の発電側課金が2024年度から導入予定とされている。FIT/FIP既認定案件については調達期間等が終了したのちに発電側課金の対象とする一方、新規FIT/FIP案件についてはその調達価格・基準価格等の算定において発電側課金を考慮することとしており、発電側課金は「事業を効率的に実施する場合に通常要すると認められる費用」として扱われることとなる。
実際の発電側課金の単価は各エリアの一般送配電事業者ごとに異なるが、これまで調達価格や入札の上限価格は全国共通で設定されてきたことから、発電側課金についても全国平均での費用負担の増加分を想定し、調達価格等の算定において考慮することとする。また、発電側課金「割引制度」の適用は考慮しないこととする。
これらの措置により、新規FIT/FIP事業者は実際の発電側課金が安価な地域(割引の大きな地域)に電源を新設することにより、利益を拡大することが可能となる。これは発電側課金制度が目的とする、系統利用の効率化に資することとなる。
なお、FIT/FIP既認定案件が負担を免れる託送料金については、需要家(小売電気事業者)が負担することとなる。
需要家主導による太陽光発電導入
これまで、FIT/FIP制度を用いた事業用太陽光発電が中心であったが、足元ではFIT/FIP制度を用いない「PPAモデル」による案件開発が増加している。国の補助金の採択により捕捉可能な案件に限っても、2022年度には合計40件・209MWに上り、FIT/FIP入札の募集容量に迫る規模となっている。
2023年度は補助金予算がさらに増額される予定であることから(計360億円)、これまで以上の需要家主導型太陽光発電の案件採択が見込まれる。
太陽光発電事業者には、FIT/FIPまたはPPAモデルなど、自社の強みを生かした事業開発の選択が求められる。
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