休止電源の維持による需給逼迫への対応策――新たに「予備電源制度」を創設へ:エネルギー管理(5/5 ページ)
電力需給逼迫への対応策の一つとして、火力発電などの休止電源を活用するための新たな仕組みの検討が始まっている。資源エネルギー庁では「予備電源制度」として新たに制度化する方針だ。
予備電源制度の適用期間
現行の容量市場では制度適用期間(契約期間)は1年間であるのに対して、長期脱炭素電源オークションの制度適用期間は原則20年とされている。
予備電源制度において、制度適用期間を仮に1年間とした場合、毎年の予備電源調達量・コスト・事業者における設備維持の人員確保等にあたっての予見性が低くなることが懸念される。
他方、制度適用期間をあまりに長期にする場合、休止期間の長さによる設備の劣化が進むため、立ち上げ時のコストが高くなることや、立ち上げに要する期間の不確実性も増すと考えられる。
なお上述のとおり、予備電源制度の対象電源は、容量市場メインオークションにおいて2年連続で不落札または未応札の電源とするため、当該電源は少なくとも2年間は容量市場における供給力に計上されないこととなる。
これらを踏まえ、予備電源制度の制度適用期間は2年間または3年間を基本とすることとした。ただし、電気事業法で定められた定期検査のタイミングを考慮することが経済合理的であることから、個別電源によって柔軟性を持たせることも検討する予定である。
なお、この適用期間の論点は、予備電源の募集タイミングや募集量と強く関係すると考えられる。
予備電源は、容量市場メインオークションの不落札等電源であることを踏まえれば、予備電源の募集はメインオークション開催後に毎年、実施することが一案であろう。他方、仮に制度適用期間を2年間とすると、累積募集量(ストック)は2倍積みあがることとなる。
よって、仮に適正な累積募集量を100kWとするならば、制度適用期間がn年間の場合、1年間の募集量は「100/n」kWとなると考えられる。
予備電源の募集タイミングや募集量は、次回以降の制度検討作業部会で議論される予定である。
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