改正省エネ法が影響、“エネルギーの定義変更”で建築物省エネ法はどう変わる?:太陽光の自家消費の取り扱いにも影響(4/5 ページ)
2023年4月から施行される改正省エネ法では、従来の「エネルギー」の定義が見直された。この改正は、建築物省エネ法におけるエネルギー消費量の算定基準などにも大きく影響しそうだ。改正省エネ法の施行を受けた、建築物省エネ法における今後の基準値の見直しの方向性などについてまとめた。
建築物省エネ法への影響 太陽光自家消費分の扱い
建築物省エネ法では、省エネ法によるエネルギーの定義や電気の一次エネルギー換算係数を用いていることから、省エネ法の改正は住宅・建築物の省エネ性能評価にも影響を与えることとなる。
現行の建築物省エネ法においては、空調設備等による電気消費量から、太陽光自家消費分を差し引いている。いわば両者を相殺(ネッティング)するかたちとなるため、電気の一次エネルギー換算係数が問題とならない(どちらも、9.76MJ/kWhという扱い)。
ところが改正省エネ法において、系統電力8.64MJ/kWh、自家発太陽光3.60MJ/kWhと係数の違いが生じると、これらの「量」を単純にネッティングすると、正しい一次エネルギー消費量が算定できなくなってしまう。
しかしながら、従来の仕組みを前提として建築物省エネ法の改正を進めてきたことから、事業者等の混乱を招かぬよう、当面の間、太陽光自家消費分を差し引く現行の取扱いを維持することとされた。
電気の一次エネルギー換算係数は現行維持
先述のとおり、建築物省エネ法においてBEI(一次エネルギー消費性能)は、一次エネルギー消費量の基準値(基準仕様)と設計値(設計仕様)を比較することにより算定される。
例えば地域区分「6」(東京など)の場合、標準的な仕様としては、空調はエアコン(電気)、給湯はガスを使用すること等が想定されており、この基準仕様に基づき、基準一次エネルギー消費量が算出されている。
省エネ法改正により、電気の一次エネルギー換算係数が約11%小さくなる(9.76→8.64MJ/kWh)ことから、エアコンや白熱灯照明のように電気を使用する設備では、今後、一次エネルギー消費量が従来よりも小さくなる。
ここで結論を先取りすれば、建築物省エネ法では当面の間、現行の換算係数9.76MJ/kWhを維持することとした。
省エネ基準への全面適合義務化が2025年4月に予定されており、これは現行の省エネ基準を前提としてきたことや、中小事業者を含めた幅広い関係者の混乱を招かないよう対応することが最優先で求められるためである。
なお、このような現行値を維持する措置は改正省エネ法においても同様である。ベンチマーク制度や機器トップランナー制度では電気の一次エネルギー換算係数は現行値を維持した上で、目標値そのものを見直す際に合わせて、電気換算係数を見直す予定としている。
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