リチウムイオン電池の設置規制を緩和、消防法で定める安全対策も見直しに:法制度・規制(4/4 ページ)
再エネの大量導入やEVの普及などにより、今後さらなる導入拡大が広がると見られているリチウムイオン電池。現状国内ではその設置・保管について厳格な規制が設けられているが、政府では蓄電池産業の国際競争力の強化などを目的に規制緩和を行う方針だ。
車載用リチウムイオン蓄電池(電池パック)の取り扱い
リチウムイオン蓄電池の貯蔵及び取り扱いについては、コンテナのような「箱」(出入口以外の開口部を有しない、厚さ1.6mm以上の鋼板で造られたもの)に収納する場合、蓄電池ごとの指定数量の倍数を合算する必要はない、との通知がすでにある。
しかしながら、車載用リチウムイオン蓄電池(電池パック)の筐体も金属製であり、かなりの強度を持つものではあるが、内圧を逃がす構造となっているため、通知の「箱」には該当しない。このため、危険物倉庫の確保や施設の耐火構造などが必要となり、蓄電池の保管・物流・施設費用の増加が負担となっていた。
このため検討会では、規制緩和策として、特定防火設備と同等以上の耐火性能を有する布(「高純度シリカ布」等)で個々の電池パックを覆うことにより、当該蓄電池ごとの指定数量の倍数(電解液量)を合算しないこととした。
リチウムイオン蓄電池の電解液の危険物としての取り扱い
リチウムイオン蓄電池の電解液は引火性液体(第4類の危険物)に該当するものの、当該電解液が電極材やセパレーターに含浸され、固体状となっているものがある。この含浸部分の危険物としての判定や電解液の数量の算定方法について、自治体によって見解が異なる実情があった。
第4類の危険物(引火性液体)を含浸した固体の例としては、鍋用の固形燃料やゼリー状の着火剤が存在する。電解液を含浸した電極材等については、固体であることから、消防法令上は次のフローチャートのとおり分類されることが確認された。
まとめ
蓄電池においても、エネルギーの「S(安全性)+3E」の確保は大前提とされる。今回、消防庁では米国FM社やドイツ保険協会の基準を参考として消火実験等を行った。今後の世界全体でのカーボンニュートラル実現に向けては、むしろ積極的に国際的な連携体制を構築し、お互いの知見を共有すると同時に、蓄電池の製造面に留まらない競争優位性を確保することが期待される。
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