LPガス業界の取引適正化へ制度改革を検討、問題視されている商習慣とは?:法制度・規制(4/4 ページ)
資源エネルギー庁が7年振りに「液化石油ガス流通ワーキンググループ(WG)」を開催。以前から指摘されている、いわゆる「無償貸与」「無償配管」といったLGガス業界特有の商慣行の適正化に向け、制度改革の検討を開始した。
問題の解決に向けた制度改正の方向性
WGでは、賃貸集合住宅における無償貸与や戸建住宅における貸付配管(無償配管)の問題はいずれも、顧客を獲得することを目的とした、LPガス事業者間の不健全な過当競争が原因であると考えられている。
この勧誘費用がLPガス小売料金に転嫁されることにより、消費者の不利益につながっているおそれがあるため、現在の商慣行を見直すとともに、WGでは制度改正も含めた議論を行う予定としている。
WG事務局からは、配管やガス機器等については、基本料金や従量料金と分離し、物件所有者が適正な対価を払って、所有権を有する契約とする案などが示されている。また消費者系委員からは、これまでの業界自主規制だけでは十分な効果が得られなかったことを踏まえ、罰則も含めた規制強化が要請されている。
なお液化石油ガス流通WGの委員によれば、戸建住宅の貸付配管(無償配管)はごく一般的な商慣行であり、現在LPガス事業者は、配管を自社資産に計上したうえで減価償却しているため、仮にLPガス事業者に所有権が無いとした場合、業界の混乱を招くことが懸念されている。
よって全国LPガス協会からは、制度見直しにあたっては、大手と中小事業者間の公平性や、LPガス業界だけでなく不動産関係業界とも連携した実効性の確保、業界の混乱を招かない対応などが要望されている。
今後もLPガスが消費者から選択されるエネルギーであり続けるため、業界や省庁の垣根を超えた幅広い事業者や行政の協力と努力が求められる。
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