日本の10年後の電力需給バランスはどうなる? 供給計画の長期見通しが公表:エネルギー管理(4/4 ページ)
今後10年間の電気の供給計画や電源、送電線等の開発についての計画を記載した「供給計画」。このほどその最新版が公開された。
発電事業者の概況
供給計画取りまとめでは、発電事業者1,040者を、当該発電事業者が保有する発電設備の供給電力量の規模に応じて分類した。
図8左は、事業者数を規模別(供給電力量)に分類したものであり、全ての年度において、事業規模が10億kWh未満の事業者が大多数を占めている。図8右は、各規模の発電事業者が見込む供給電力量を積算したものであり、積算した供給電力量の7割程度は、事業規模が100億kWh以上の事業者によって占められている。
なお、供給計画を作成提出するのは、電気事業法で定める「発電事業者」(合計容量1万kW以上等の要件あり)のみであるため、これ以外にも小規模な非・発電事業者による供給電力量が別途存在する。
また、発電事業者が2023年度末に保有する発電設備の種類に分別したものが図9である。太陽光発電を中心に再エネ発電事業者の増加が顕著である。
供給計画の取りまとめにおいて抽出された現状の課題
今般の2023年度供給計画の取りまとめは、容量市場による最初の実需給年度(2024年度)の前年に当たる。容量市場のメインオークションにおいて非落札となった電源の保有者は、当該電源を「供給力として不要」と判断し、供給計画において「休廃止」とする側面も生じている。
2023年度中に休廃止となる火力電源243万kWのうち、従来から休廃止が計画されていたものが100万kW、2023年度供給計画で新たに計上されたものが143万kWである。
また容量市場落札電源の中にも、設備トラブル等により、容量市場から「退出」する電源が生じており、このような電源退出が特定のエリアに偏在することにより、当該エリアだけが供給力不足に陥るおそれがある。このため、今後いたずらに電源退出が多発しないよう、必要に応じた制度面での措置を取るよう、広域機関は国に要請している。
また上述のように内外無差別の観点から、旧一電の小売部門においても、供給計画の提出時点では2年目以降の供給力確保量が確定しない可能性が高まっている。発電事業者の計画的な燃料調達へ与える影響の観点からも、供給計画において小売と発電の短期・長期の相対契約の状況を把握することは重要である。
このため広域機関では、電気事業者以外からの供給力調達量やDRの確保量等も含めて、需給バランス評価における扱いを検討していく予定である。
発電事業者に対しては、保有する供給力、調整力等の把握について、これまで以上に精緻化、高度化が求められる。2024年度以降、調整力公募から需給調整市場へ全面的に移行することにより、調整力の確保は実需給に近い断面で行われることになる。このため、年間段階の調整力の確保状況を、これまでのようには把握できなくなる。
調整力はそれを提供できる電源等のリソースが存在することが前提となるため、今後は、供給計画の取りまとめにおいて、その確認を担えるような検討が必要とされている。
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