太陽光パネルは「N型」が主流に、次世代モジュールの覇権争いが本格化:太陽光(3/3 ページ)
太陽光パネルの技術トレンドが、ここにきて大きく変わってきた。世界シェア上位のパネルメーカーのほとんどが、主力製品を「P型」から「N型」に移行しようとしているのだ。先頃、東京ビッグサイトで開催された「PX EXPO」でも、初披露となったモジュールの大半がN型だった。
ライセン/N型HJTを追求し、700W時代を拓く
ライセンエネルギーは同じN型でありながら、これまで紹介した3社とは別の技術、N型HJT(Hetero Junction technology)を中核に据える。N型HJTモジュールは表裏対称の構造であるため、裏面の発電効率にも優れており、これまでにない高次元の両面発電が可能であるという。また、温度係数が低いという構造上の特性をもつため、同じ出力でも、より大きな発電量を得ることができる。さらに、同社独自の封止技術により、年間劣化率を0.25%に抑えている。
同社は2019年からN型HJTモジュールの開発・生産を行っており、2020年・2021年時点でN型HJTモジュール出荷実績世界No.1となっている。ただ、それらの製品は158mmセルを使ったものだった。一方、現在展開している「Hyper-ion」シリーズには210mmセルが採用されており、700W超の大出力を実現するとともに、キロワット時あたりのコストをより効果的に削減することができるという。
ロンジ/N型開発先行するも、P型を継続強化
近年急速にモジュール出荷量を伸ばし、ここ3年は連続して世界トップだったロンジ。同社は、他の大手メーカーとは異なり、当面は引き続きP型モジュールを前面に打ち出していく。先ごろ発表された新製品「HI-MO6」もP型セル(182mm)を採用したものであり、HPBC(Hybrid Passivated Back Contact)という新技術により、変換効率のさらなる向上と高出力化を実現している。
同製品は、セルの表面にバスバーなどの配線がなく、太陽光の取り込みを最大化できる。配線は裏面側で一直線になっていることから、配線によるセル端部への応力が減少し、長期信頼性も向上している。さらに、太陽光の入射角が低い場合や低照度の場合でも、発電性能の低下が相対的に少ないのだという。同社は、これからも実績あるP型セルの可能性を追求し、いっそうのシェア拡大を図っていく構えだ。
とはいえロンジは、2021年4月にN型TOPConの変換効率25.09%という世界記録(当時)を打ち立て、同6月にはN型HJTにおいて変換効率25.26%の新記録(当時)を樹立している。TOPCon、HJTいずれにおいても、最先端の研究開発を続けてきているのだ。
同社の今後の動きを含め、新たな技術革新により、パネルメーカーの勢力図がどのように変わっていくことになるのか注目される。
関連記事
- 太陽光パネルを“垂直設置”する新システム、少面積でも太陽光発電を導入可能に
エア・ウォーターはルクサーソーラーと共同で、駐車場併用タイプの垂直ソーラー発電システム「VERPA(ヴァルパ)」を開発したと発表した。日本市場を対象として同年5月から販売を開始する。 - ペロブスカイト太陽電池の市場は35年に1兆円規模に、タンデム型がけん引
富士経済は2023年3月、ペロブスカイト太陽電池などの市場展望をまとめた「2023年版 新型・次世代太陽電池の開発動向と市場の将来展望」を公表した。それによると、ペロブスカイト太陽電池の市場は、2035年に1兆円規模に拡大するという。 - 川崎市も太陽光発電の設置を義務化へ!東京都との違いと制度の詳細を解説
川崎市が新築建築物に太陽光パネル設置を義務付ける条例改正を実施。東京都に続く新たな設置義務化条例として注目されている。本稿ではその制度概要と、東京都版の制度との違いなどを解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.