都市ガスの脱炭素化に役立つ「バイオガス・バイオメタン」、国内外の普及動向:日本における利用状況は?(4/4 ページ)
都市ガスのカーボンニュートラルの実現策として期待されている「バイオガス・バイオメタン」。現在の日本国内における利用状況と関連制度の、そして海外での利活用の状況についてまとめた。
EUの水素・脱炭素ガス市場パッケージとは?
欧州委員会は、2050年のEUのエネルギー消費全体の約20%を占めると想定されるガス体エネルギーの脱炭素化を図るため、再生可能ガス、天然ガス及び水素の域内市場に関する指令案及び規則案からなる、「水素・脱炭素ガス市場パッケージ」を公表している。
EUの2050年のエネルギーミックスにおいて、再生可能ガス・低炭素ガス(バイオガス、バイオメタン、再生可能水素、低炭素水素、合成メタン)が、ガス体エネルギーの約2/3を占め、残りはCCUSを伴う化石ガスが想定されている。
指令案では用語が定義されており、例えば、“natural gas”は、バイオメタン等を含む、メタンを主成分とする全てのガスであって、技術的にかつ安全に”natural gas system”に注入し、輸送できるものと定義されている。また、“renewable gas(再生可能ガス)”は、再エネ指令に規定するバイオメタンを含むバイオガスやRFNBO(非生物起源の再生可能燃料)と定義されている。
EUでは、現在、再生可能ガス・低炭素ガスは、市場やネットワークアクセスに関して規制障壁があり、天然ガスに比べて不利であるため、再生可能ガス・低炭素ガス市場の効率的かつ持続的発展のためには、市場の枠組みを作り替える必要があると考えられている。
指令案における規定では、ガス導管事業者は、再生可能ガス・低炭素ガスの生産設備を無差別に接続するための透明かつ効率的な手続きを確立し公表することや、ネットワークアクセス費用を減免(再生可能ガスは100%、低炭素ガスは75%)することが求められている。
また欧州のガス導管事業者の団体であるENTSOGは、2019年12月に「ロードマップ2050」を公表し、電力グリッドとのセクターカップリングを前提とした、水素やバイオガス等のハイブリッドのガスグリッドのイメージを提示している。
米国・カリフォルニア州のバイオメタン目標
カリフォルニア州公益事業委員会は、ガス供給事業者のバイオメタン調達目標として、2025年に約5億m3、2030年に約20億m3と定めている。これは、ランドフィル・ガス(ごみ埋立処分場において廃棄物の分解に伴い発生するガス)に由来するメタン排出量を、2030年までに40%削減(2013年比)する目標達成の手段の一つとして位置づけられている。
このように欧州や米国では、日本とは桁違いのバイオガス・バイオメタンの利用目標が設定されている。そもそも日本では現時点、バイオガス・バイオメタンの目標値が具体化されていない。
バイオガスの原料となるバイオマスの発生量(賦存量)は、国の規模という要因を除いて、それほど大きな違いはないと考えられる。国内資源の有効利用を目指して、省庁の壁を越えた野心的な目標設定が求められる。
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