欧州が先導する蓄電池のサステナビリティ規則、日本の対応策と今後の課題は?:日本企業にも影響する「欧州バッテリー規則」への対応が急務に(4/4 ページ)
カーボンニュートラル達成の鍵の一つであり、EVをはじめ今後さらなる普及が見込まれている蓄電池。一方、その製造から廃棄までの環境負荷の管理・低減が今後の課題であり、欧州では独自の規則案も公表している。経済産業省ではこうした動きに対応するため「蓄電池のサステナビリティに関する研究会」を設立。このほど2022年度に実施した各種施策・事業の報告が行われた。
蓄電池に関連する各種データの連携基盤を構築へ
欧州バッテリー規則案では、鉱物資源の調達情報のトレーサビリティ確保やGHG排出量、リサイクル材の使用割合等のデータを消費者へ提供するため、サプライチェーン全体の情報を共有するデータプラットフォームである「バッテリーパスポート」が創設される予定である。
また欧州では、自動車産業全体でCFP等のサプライチェーンに関するデータを共有するプラットフォーム「Catena-X」が開始されている。
データ連携基盤の構築は、蓄電池や自動車に限らない業種横断的な課題であるものの、欧州バッテリー規則等への対応は喫緊の課題であることから、「1.蓄電池のCFP」、「2.蓄電池の人権・環境DD」を先行ユースケースとして、取り組みを推進していくこととしている。
企業をまたいでサプライチェーン上のデータを共有して活用できるようにするため、企業の営業秘密の保持等を実現しながら、拡張性や経済合理性を担保し、データを連携する仕組みについて運用面・技術面から検討が進められている。
データ連携基盤の立ち上げに向けた課題
蓄電池のCFP等を先行ユースケースとして、新たなデータ連携基盤を立ち上げるには、そのシステムの運用・管理を行う運営主体が必要となる。企業の営業秘密を含んだデータを取り扱う運営主体には、信頼性や中立性が求められる。
また、先行ユースケースである蓄電池のCFPや人権・環境DDのみならず、自動車全体のCFPやサプライチェーンの高度化といったさまざまなユースケースの実装等を見据え、拡張性のある仕組みとして構築していくことが必要である。
蓄電池以外の自動車部品にも対象を広げることは、データ連携基盤の運営費用を、より多くの参加者で負担することにつながり、1社当たりの費用負担の抑制にも有効と考えられる。
さらに、欧州バッテリーパスポートやCatena-Xなどとの相互運用性の確保等、海外とのハーモナイゼーションを進めていくことも重要である。
また、自動車や蓄電池はグローバルな商品であることから、データ連携基盤のハーモナイゼーションだけでなく、CFP算定方法や人権・環境DD手法そのものについても、海外との連携やハーモナイゼーションが求められる。
関連記事
- 蓄電池は10MW以上が対象に、「長期脱炭素電源オークション」の調整機能要件
脱炭素電源への投資促進を目的に、2023年度から始動する「長期脱炭素電源オークション制度」。蓄電池や揚水発電、水素・アンモニア火力等が同制度に参加する場合、調整機能を持つことが要件とされている。こほのど、要件として求める調整機能の具体的な基準が検討された。 - リチウムを超える「アルミニウム」、トヨタの工夫とは
電気自動車に必要不可欠なリチウムイオン蓄電池。だが、より電池の性能を高めようとしても限界が近い。そこで、実質的なエネルギー量がガソリンに近い金属空気電池に期待がかかっている。トヨタ自動車の研究者が発表したアルミニウム空気電池の研究内容を紹介する。開発ポイントは、不純物の多い安価なアルミニウムを使うことだ。 - 太陽光パネルは「N型」が主流に、次世代モジュールの覇権争いが本格化
太陽光パネルの技術トレンドが、ここにきて大きく変わってきた。世界シェア上位のパネルメーカーのほとんどが、主力製品を「P型」から「N型」に移行しようとしているのだ。先頃、東京ビッグサイトで開催された「PX EXPO」でも、初披露となったモジュールの大半がN型だった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.