大型化が進む洋上風力発電、新たな環境アセスメント制度を検討へ:法制度・規制(3/5 ページ)
国内でも導入に向けた動きが加速している洋上風力発電。設置される風車の大型化とともに大規模化が進むなか、政府では新たな環境アセスメント制度の創設に向けた検討を進めている。現行制度の課題と、今後の見通しをまとめた。
日本版「セントラル方式」の導入を検討
複数事業者による手続の重複を解消し、事業者、地域、行政の各者の総合的なコストを抑えるとともに、事業者選定後の環境アセス手続をより迅速化することが求められている。
このため、有望区域の選定段階における環境配慮のための手続を国(環境省)が実施することに加えて、再エネ海域利用法に基づく事業者公募の前に、海域における現地調査を含む環境アセス手続の一部を国(環境省)が実施することとする。
海域の状況に応じて、調査内容(調査項目・手法、調査区域、調査期間等)や、調査結果の活用方法(当該調査によって得られる結果を踏まえどのように予測・評価を行うのか)を整理し取りまとめるが、これを環境影響評価の「設計書」と呼んでいる。
なおセントラル方式の導入後も、公募により選定された事業者は、国が行った調査結果を活用しつつ、具体的な事業計画に基づき、予測・評価等の最終段階の環境アセス手続を行うこととする。
新たな制度を検討する際の基本的な視点
2022年度の環境省検討会では、関係者と十分なコミュニケーションを図った上で、適正な環境配慮が確保された事業計画とすることにより、洋上風力発電の受容性を高めることや、洋上風力発電導入の円滑化を図ることを目的として、以下の7つの視点に基づき、検討の方向性を整理した。
なお近年、洋上風力の排他的経済水域(EEZ)への展開を可能とするための法整備・環境整備に対するニーズが高まってきていることを踏まえ、領海・EEZともに、国連海洋法条約等の国際法に合致した制度とすることが示された。
- 再エネ海域利用法に基づくプロセスと環境アセスメント制度の連携
- 事業者の予見可能性の確保
- 領海とEEZは原則同様の仕組みとする
- 環境配慮の質の担保
- 環境影響の相互理解のために必要な関係者とのコミュニケーションの確保
- 事業者選定後の環境影響評価の迅速化
- 個別事業に係る環境影響評価の結果や環境影響のデータを踏まえた科学的知見の充実と共有
なお、再エネ海域利用法・アセス制度のプロセスと各論点の関係性は、図5のとおりである。
以降では、「区域選定における環境配慮手続」から「アセスメントの実施」に至るプロセスごとに、新たな環境影響評価の具体的な手続の在り方について整理した。
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