大手電力会社の卸取引は適切か――2023年度の評価結果が公表:電力供給サービス(5/5 ページ)
発送電分離が行われた電力自由化以降、健全な市場環境の維持においては、旧一電の電力小売部門による適切な卸取引の遂行が重要なポイントとなる。このほど、2023年度通年の相対契約などについて、内外無差別な卸売が実施されているかの評価が行われた。
入札制の確認結果
2023年度相対卸において入札を実施した事業者は、東北・東電ホールディングス(HD)・東電リニューアブルパワー(RP)・東電EP・JERA・関西の6社である。
このうち、東電HD・RPではグループ内小売が入札に参加していないため、×評価とされた。入札の最低価格と予定供出量については、東北電力は社内外ともに通知、東電EP・JERA・関西電力は社内外ともに非公表としており、卸部門と小売部門の情報遮断も確認された。
ブローカー制の確認結果
北海道電力とJERAは、2023年度相対卸においてブローカー取引を実施したが、自社小売/グループ内小売が優先的に数量を確保することはなかったことが確認された。
2023年度相対卸の全体評価
以上のように、2023年度の通年の相対契約について内外無差別な卸売が担保されているかエリア毎に確認した結果、北海道電力と沖縄電力の2社については、現時点で内外無差別が担保されていると評価された。
北海道電力は、自社小売も参加する形での第三者(ブローカー)が運営する電力取引のプラットフォーム上の卸販売を実施していること、沖縄電力は社内外に同一メニューを同一価格で提供していることが高く評価された。
北海道・沖縄以外にも、東北と関西は残る未クリア項目が1つだけであるなど、総じて内外無差別に向けた取組は前進していると言える。
なお、内外無差別が確認されれば、常時バックアップ(JBU)の廃止判断が可能とされている。近年、JBUの供給逼迫も報告されていることから、内外無差別の促進は、「外外」差別の緩和にもつながり得ると期待される。
また発電事業者に対するアンケート調査では、一定の長期相対契約を望む回答が多く見られる。今後は、電源の新設・既設電源維持の観点からも、卸供給契約の在り方の検討が進むことが期待される。
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