家庭・中小企業の省エネ促進へ新制度、家電機器にDR機能の搭載などを求める方針に:省エネ機器(5/5 ページ)
家庭・中小企業のさらなる省エネ・脱炭素化に向けて、資源エネルギー庁では非化石エネルギーへの転換や、デマンドレスポンスなどへの対応を促す新制度を設置する方針だ。現時点で議論されてる新制度のポイントについてまとめた。
エネルギー小売事業者から消費者への情報・サービス提供
省エネはそれ自体が需要家のコスト削減に繋がるものであるため、大規模需要家に対しては、ESCOのような省エネサービスがビジネスとして成立している。他方、家庭や中小企業などの小口のエネルギー需要家に対しては、個別の契約を結んでエネルギー管理サービスを提供してその対価を得るビジネスの成立は困難とされる。
このため省エネ法では、消費者に対して省エネ情報を提供することを、エネルギー小売事業者等の努力義務として定めている。また、このようなエネルギー小売事業者の努力を評価するため、「省エネコミュニケーション・ランキング制度」が2021年度から開始されている。
しかしながら、現時点では事業者の回答率が低いことや消費者の認知度が低いことが課題とされている。このため今後は、一定規模以上のエネルギー小売事業者は、消費者の省エネ・非化石転換・DRを促す情報提供・サービス提供に関する計画を作成し(プレッジ)、国に対する報告を義務づけ、その進捗を国が評価(レビュー)する仕組みについて検討を深めることとした。
なお、欧米諸国では、エネルギー供給事業者に省エネ目標を設定し、需要家側で実施する「エネルギー供給者義務制度」が導入されており、一定規模以上のエネルギー供給事業者は、顧客へ省エネサービスを提供することが義務付けられている。
今後の議論の進め方
これまで家庭や中小企業では難しいと考えられていた、非化石転換やDRなどの取り組みについて、諸外国では義務的な制度も含め、多くの先進的事例があることが明らかとなった。
今回の中間論点整理では、制度対象とする企業・機器や目標年・目標数値の多くは未定であるが、今後、費用便益分析などを踏まえて検討を深め、年内に一定の結論を得る予定としている。
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