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kWhとΔkWの同時最適化を目指す「同時市場」、立ち上げに向け詳細検討がスタート:エネルギー管理(4/4 ページ)
再エネの大量導入など電源構成を受けて、調整力や供給力のより効率的な調達ニーズが高まっている。そこで政府では、kWhとΔkWを同時に約定させる仕組み、いわゆる「同時市場」の導入に向けて約定ロジックなどの詳細検討を開始した。
価格算定の方法による市場価格等への影響の検証
作業部会においては、約定価格の算定について、起動費や最低出力費用、ΔkW等の取扱い方法について、複数の案が提示されていた。
例えば最低出力費用の取り扱いについて、図7の①案の場合、費用回収漏れが生じるおそれがあることや、②案の場合、計算負荷が高まるおそれがあるなど、それぞれ一長一短がある。
よって検討会では、日本の電源の特性も踏まえつつ、シミュレーションを行った上で、複数案の比較検証を行うこととする。
また、米国PJM等では費用回収漏れが生じた場合に、Upliftという形で補填しているが、日本の同時市場において想定される、回収漏れ費用の多寡についても検証を行うこととする。
同時市場の費用便益評価
米国で同時市場を導入した地域では、同時市場移行時に費用便益評価を実施している。米国PJMにおける市場運営等に関する便益評価では、年間合計32〜40億ドル程度の効果があると評価されている。
今後検討会では、日本に適切な費用便益項目を抽出した上で、定量・定性の両面から、具体的な分析を進めていく予定である。
検討会では、2030年頃を想定した全国の需給・系統データの模擬を行い、電源起動・出力配分(SCUC・SCED)ロジックのカスタマイズや、市場価格等への影響の検証を並行的に進め、2023年度内での取りまとめを予定している。
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