大幅な見直しが行われたベースロード市場、2023年度初回オークションの結果と分析:エネルギー管理(5/5 ページ)
ベースロード電源に対するアクセスの公平性確保や、その活用促進に向けて導入されたベースロード市場。導入から数年が経過し、複数の制度変更が行われたなかで、2023年度の第1回オークションの結果が公表された。本稿では制度変更の概要とともにその結果を解説する。
BL市場供出量における適格相対契約量控除の変更
大規模発電事業者が、制度的にBL市場へ供出するにあたっては、その制度目的や効果が重複する「常時バックアップ」や「電源開発(J-POWER)電源の切り出し」「適格相対契約量」については、供出量から控除することが可能である(※適格相対契約の条件は表7を参照)。
従来、適格相対契約の控除可能量は供出量の10%を上限としていたが、相対供給量が新電力の需要に占める割合はすでに3割を超えていることから、2023年度以降、その上限を30%に見直すこととした。
また、長期相対契約を促進する観点から、長期相対契約についてもBL市場供出量から控除可能として、その控除上限は30%とした。
2023年度第1回オークション(1年商品・固定価格取引)では、売り入札量・買い入札量のいずれも前年同期と比べて減少したが、これは、適格相対契約控除量の引上げによる制度的供出量控除・購入可能量控除の増加等が一因と考えられる。
また買応札量の減少は、長期商品が誕生したため応札が分散したことや、第3回オークションで実施予定の1年商品・事後調整付取引に応札するために、第1回の応札を控えたこと等も理由として考えられる。他方、約定率は33.9%と大幅に上昇し、これまでで最も高い約定率となった。
1年商品(固定価格取引)、2年商品(事後調整付取引)のいずれも高い約定率であったことは、売り手と買い手の価格目線がある程度(従来以上に)一致していたことを示している。
事後調整付取引の導入等を踏まえ、BL市場供出価格の考え方や燃料費の価格変動リスクの織り込み状況がどのように変化したかについては、今後、電力・ガス取引監視等委員会において事後検証が行われる予定である。
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