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CO2の「海底下貯留」商業化に向けた課題とは? 環境省が関連制度を見直しへ法制度・規制(2/4 ページ)

カーボンニュートラルの達成に向けた方策として導入検討が進んでいる「CCS(二酸化炭素回収・貯留)」。その貯留先の一つとして検討されているのが「海底」だ。環境省では専門の委員会を設置し、今後の海底下CCSに係る海洋環境の保全の在り方や制度見直しについての検討を開始した。

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海洋汚染等防止法による海底下CCSの許可制度

 海洋汚染等防止法では、環境大臣の許可を受けた場合を除き、廃棄物を海底の下に廃棄することを禁止しており、CO2の海底下廃棄に係る許可制度を設けている。

 海底下CCSを目的として環境大臣の許可を受けようとする者は、事前に環境影響を評価しなければならず、許可を受けた者は、海洋環境の保全に障害を及ぼさないようCO2を海底下に廃棄し、継続的に海洋環境を監視(モニタリング)しなければならない、とされている。


図3.海底下CCSに係る許可制度の流れ 出典:海底下CCS制度専門委員会

 今後、商業ベースの海底下CCSが多数実施されることを踏まえ、海洋環境の保全と事業者の予見性向上の両立に向けた、海底下CCS関連制度の見直しの論点が示された。

海底下CCS事業の許可期間の見直し

 現行制度では、海底下CCS事業の許可期間は最長5年であり、事業者は必要に応じて許可の更新を行う必要があるため、事業の予見可能性を損なう面もある。また、審査は主に許可期間内(5年)の行為が対象とされるため、CCS事業全体を捉えた海洋汚染の防止の観点からも、十分な仕組みとは言えないとの課題もある。


図4.現行制度における海底下CCS事業のライフサイクル 出典:海底下CCS制度専門委員会

 諸外国の事例等を踏まえ、当初の許可審査時に、事業の終了段階を含む事業のライフサイクル全体を確認した上で、事業期間全体をカバーできるように許可期間を設定することや、事業の実施状況について定期的にレビューするよう、制度の見直しを行うこととする。


表1.諸外国のCCS許可の期間と見直し頻度 出典:海底下CCS制度専門委員会

海底下に廃棄するCO2ガスの基準

 96年議定書では、他の廃棄物を混ぜて海底下へ処分することを防ぐため、「極めて高い割合」でCO2から構成されている場合に限り、海底下への処分を検討することができるとされている。このため、96年議定書の国内担保法である海洋汚染等防止法においては、「特定二酸化炭素ガス」の基準として、CO2濃度が99%以上であることなどを定めている。

 また従来は、CO2分離回収方法として、アミン吸収液とCO2の化学反応を利用する「アミン化学吸収法」が主流であったため、現行の施行令ではアミン化学吸収法に限定した規定となっている。

 しかしながら、近年では「物理吸収法」や「固体吸収法」といった新たなCO2分離回収方法も実用化されている。このため、「特定二酸化炭素ガス」の特性に係る基準について、最新の技術動向を踏まえた見直しを行うこととする。

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