旧一電の「グロス・ビディング」休止、スポット市場に影響は出ているのか?:エネルギー管理(3/3 ページ)
大手電力が自主的な取り組みとして、社内取引の一部を卸電力市場を介して行う「グロス・ビディング」が10月から休止となった。制度設計専門会合では、この廃止がスポット市場に影響を与えていないかを調査し、その結果を公表した。
GB休止後に「安値の売り入札」の減少量の方が大きい理由
監視等委員会では、グロス・ビディングの休止後に、複数の事業者において安値の売り入札の減少量の方が、高値の買い入札量の減少量より大きい理由を確認した。
その結果、従来からグロス・ビディングの目標量を達成するために、自社需要の一部に加え、余剰供出の一部(※本来はグロス・ビディングに該当しない)もグロス・ビディングと位置付けて、安値(0.01円/kWh)売りを行うことがあったが、グロス・ビディングの休止後は、余剰供出の全量を限界費用売りに変更したことが理由であることが判明した。
このためグロス・ビディング休止前後の入札方法の変更に伴い、安値(0.01円/kWh)売り入札量は大きく減少することとなった。
ただし、監視等委員会では、限界費用で同量の売り入札と買い入札(差替買い)を行う現在(グロス・ビディング休止後)の入札方法は、従来の入札方法と、スポット市場に実質的に同じ効果をもたらすため、これ自体は実質的にスポット市場に影響を与えていない、と判断している。
スポット市場全体の変化の確認
また監視等委員会では、グロス・ビディングを休止した10月1日の前後において、スポット市場価格に大きな変動は見られないことを確認した。
さらに、グロス・ビディングを休止した直後の1週間(10/2〜6)の売り入札量と買い入札量を、その直前の1週間(9/25〜29)と比較すると、ほぼすべての曜日で売り買い双方が減少しており、すべての曜日で売り入札量の減少量よりも買い入札量の減少量が大きくなっている。
買い入札量の変化は、需要自体の変化など、グロス・ビディングの休止以外の要因も考えられるため、これだけで直ちに影響の有無を判断できるものではないが、少なくとも市場の需給バランスがタイト化していないことが確認された。
グロス・ビディングの休止による影響の評価
以上より、グロス・ビディングの休止がスポット市場の需給バランスや約定価格に影響を与えていると言える事象は、現時点では確認されなかった。
他方、今回の確認だけで、グロス・ビディングを取りやめてよいと判断するのではなく、今後1年程度は引き続き、市場への影響の有無が監視される。
監視等委員会では、スポット市場における取引量の減少や、0.01円/kWhの売り札の減少などが、市場参加者に誤解や不安を与えないよう、引き続き適切な情報発信を行っていく予定としている。
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