脱炭素施策として期待のCO2回収貯留事業、その仕組みとリスク管理の在り方とは?:エネルギー管理(4/4 ページ)
カーボンニュートラルの達成に向けた方策として導入検討が進んでいる「CCS(二酸化炭素回収・貯留)/CCU(二酸化炭素回収利用)事業」。カーボンマネジメント小委員会の第3回会合では、CCSによるCO2貯留メカニズムやリスクマネジメントの体系等が報告された。
長岡CO2地中貯留プロジェクトと地震の影響に関する評価
新潟県長岡市におけるCO2地中貯留プロジェクトでは、2003〜2005年の間に約1万トンのCO2が深度1,100mの陸域地下に貯留された。この実証実験中の2004年10月23日に、中越地震(M6.8)が発生した。震源と貯留サイトの距離は約20kmであり、震源の深度は13kmである。
圧入井から60m離れた観測井では圧力増加量が約30%減少しており、圧入井からの距離に応じて圧力増加量が減少するため、800m程度離れることで潮汐力の目安となる0.1kPa(大気圧の1000分の1相当)に減少し、20km先の震源まで圧力が及ぶとは考えられないと結論付けられた。
また、地震による地上設備や坑井に損傷はなく、CO2漏洩の懸念はないと判断され、地元自治体や経産省への報告・了承を得た上で、CO2圧入は再開された。
国際エネルギー機関(IEA)においても、CCSは大規模地震やCO2の漏洩を引き起こす断層の再活性化を引き起こすことは「ありそうもない(unlikely)」と認識されているが、CO2地下貯留の安定性や安全性に関する国際的な共同研究も進められている。
「S+3E」のように、エネルギーの大原則では常に「S(安全性)」が優先されることを忘れることなく、科学的知見を積み重ねることと同時に、地域社会に対して分かりやすく、対話を続けることが今後も求められる。
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