「くらしGX」を実現へ――家庭・業務部門の省エネ・非化石転換政策の今後:法制度・規制(4/4 ページ)
政府では「暮らし」に関連する需要家分野のGXを「くらしGX」と呼び、重点分野の一つとして分野別投資戦略の策定を進めている。「省エネルギー小委員会」第43回会合では、こうした需要サイドにおける今後の省エネ・非化石転換政策について検討が行われた。
省エネ法定期報告情報の公開制度
これまで、省エネ法の対象となる特定事業者は、毎年度、国に定期報告を行ってきたが、2023年度から、事業者の同意に基づき、特定のフォーマットの内容を公開する制度が新たに創設された(※省エネ小委では「開示」と呼んでいるが、この情報は広く一般に公開されるため、本稿では「公開」と置き換えている)。
2023年度は、東証プライム上場企業及びその子会社を対象として、試行運用を実施しており、公開を宣言した47社の個社情報が今年度末頃に公開される予定である。
2024年度より、全ての省エネ法特定事業者(エネルギー使用量1,500kl/年以上の大規模需要家)を対象として、本格運用を開始する。
現在、開示宣言を行った企業に対して、省エネ補助金等の申請時に加点を行うことでインセンティブを付与しているが、特定事業者による情報発信を更に促すため、今後は補助金申請における「要件」とすることを検討予定としている。
「省エネルギー技術戦略」の改定
「省エネルギー技術戦略」は、広く技術開発・導入普及が必要な省エネ技術の指針とされており、直近では2019年7月に改定されている。
これまでは、省エネに関する重要技術をできるだけ広く記載してきたが、次回(2024年)の改定では、国の省エネ政策の観点から特に政策的意義の大きい技術について重点化した記載を行うなどのメリハリをつけることを検討する。
国は、くらしGXの分野別投資戦略(暫定版)において、今後10年程度の間に、14兆円以上の官民投資額により、国内排出量を約2億トン削減することを目標としており、省エネ小委では、これを踏まえた制度設計の具体化を進める予定としている。
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