企業のGHG排出量の算定にも影響、「CO2回収価値」をSHK制度で反映可能に:法制度・規制(1/4 ページ)
企業が温室効果ガスの排出量の算定や報告のルールとなっている「SHK制度」。環境省では今後のカーボンニュートラル施策の一つとして重要視されているCCS・CCU(CO2の回収・利用・貯留)や森林吸収等について、SHK制度における取り扱いの方法を議論している。本稿では現状の検討内容の概要や、今後の見通しについて紹介する。
「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」(SHK制度)は、温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)に基づき、GHGを一定量以上排出する事業者に対して、自らの排出量の算定と国への報告を義務付ける制度である。事業者が自社の排出量を把握することにより自主的削減努力を促すことや、情報の公表・可視化による国民気運の醸成などを目的としている。
2050年カーボンニュートラルの実現に向けては、GHG排出量の削減と並び、CCS・CCU(CO2の回収・利用・貯留)や森林吸収等により、大気からCO2を除去することも不可欠であると考えられているため、環境省の「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度検討会」では、SHK制度におけるCCS・CCUや森林吸収等の取り扱いが議論されている。
現行のSHK制度におけるCCS・CCUの取り扱い
現行のSHK制度ではその算定マニュアルにおいて、自らが排出するCO2等を回収して大気放出しない場合は、その回収分は報告すべき排出量から控除することが可能としている。ただし、回収されたCO2が貯留・利用された場合の扱いについては位置づけられておらず、例えば「ドライアイスの使用」などは利用者に排出量を報告する義務がある。
現行ルールでは、CCUの一つである合成メタンや合成燃料等のカーボンリサイクル製品については、その利用者が燃焼時点でCO2排出量を計上する必要があると考えられている。
現在、合成メタン等の商用化が進められつつあり、供給側・需要側双方の予見可能性確保が求められている。このため検討会では、合成メタン等の事業環境整備の観点から、燃料用途CCUの取り扱いについて優先的に検討を進めることとしている。
現行のSHK制度における森林吸収等の取り扱い
現行のSHK制度では、事業者の「基礎排出量」や「調整後排出量」のみが義務的報告事項であり、基礎排出量では「排出量」を算定の対象としており、森林の整備・保全による「吸収量」は算定の対象外である。他方、「調整後排出量」の報告には、森林吸収等のJ-クレジットを使用することが可能である。
なお、SHK制度では義務報告とは別に、任意報告事項として「排出量の増減の状況に関する情報その他の情報」を報告することも可能である。2022年度実績から新たに、森林吸収量や炭素貯蔵量の報告も可能となったが、統一的な算定方法は規定されていない。
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