企業のGHG排出量の算定にも影響、「CO2回収価値」をSHK制度で反映可能に:法制度・規制(4/4 ページ)
企業が温室効果ガスの排出量の算定や報告のルールとなっている「SHK制度」。環境省では今後のカーボンニュートラル施策の一つとして重要視されているCCS・CCU(CO2の回収・利用・貯留)や森林吸収等について、SHK制度における取り扱いの方法を議論している。本稿では現状の検討内容の概要や、今後の見通しについて紹介する。
SHK制度で森林吸収等を扱う意義
CO2の吸収活動も多種多様であるが、日本のCO2吸収量4,760万t-CO2の90%を占めるのが、森林吸収量(伐採木材製品(HWP)に係る炭素貯蔵量を含む)である。このため、検討会ではまず森林吸収のSHK制度における取り扱いを検討することとした。
SHK制度対象事業者による森林吸収等に係る取組としては、以下の2点が想定される。
- 社有林の所有・管理を通じた森林吸収量(炭素蓄積量)の確保
- 木造による自社ビルの建築を通じた炭素固定と、エネルギー多消費型資材を木材に代替することによる排出削減
具体的な算定ルールの策定にあたっては、GHGプロトコルの吸収ガイダンス(案)や、国家インベントリの算定ルール、J-クレジット制度の算定ルールをベースとしながらも、企業の自主的削減努力を促すSHK制度の趣旨に沿ったかたちでの、森林吸収量・木材製品炭素貯蔵量の算定方法を検討することが求められる。
SHK制度における森林吸収等の論点
森林吸収量とは、森林によるCO2の吸収量と排出量の差分としての「純吸収量」のことであり、異なる時点間の炭素蓄積の差分を算出するストックチェンジ法(蓄積差分法)により算定を行うことが一般的である。
国家インベントリにおいては、国又は地域レベルでの統計データ等を用いて純吸収量を算出することにより、算定結果の完全性が担保されるが、組織単位や事業単位で算定を行う場合には、排出量が算定対象から外れてしまわないよう、算定対象となる「バウンダリー(組織境界、活動境界)」の設定方法を検討する必要がある。
GHGプロトコル等によるバウンダリー設定の考え方を比較したものが表2である。
また、吸収・除去に係る算定報告に当たっては、将来時点で「反転」(過去に吸収量として算定した炭素が再びCO2として大気中に放出されること)が生じうることから、反転発生時の算定報告についても検討する必要がある。
このほかにも、SHK制度で森林吸収等を取り扱う場合の論点や課題は幅広く存在し、今後、検討会では、
- 法令/制度上の吸収報告の位置づけ・効果
- 適切な報告のルール(吸収報告は任意か義務か、排出になった場合どうするか)
- 森林吸収量の算定方法(国家インベントリ、GHGプロトコル、J-クレジット等との整合)
- HWP(伐採木材製品)も含めた炭素貯蔵の扱い
- J-クレジットを移転した者のダブルカウントの防止
などについて、毎年の算定・報告に係る実務面での負担等を考慮した検討を行う予定としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
改正省エネ法の対応実務のポイント、2024年度からの報告・任意開示にはどう対応すべき?
2023年4月から施行された改正省エネ法。新たに再エネや非化石エネルギーの利用に関する内容を報告書に盛り込む必要があるなど、事業者はこれまでと異なる対応が求めらるようになりました。本稿ではこうした改正省エネ法に対する具体的な対応の要点や、今後の社会情勢を見据えたGXマネジメントのポイントまで解説します。
脱炭素施策として期待のCO2回収貯留事業、その仕組みとリスク管理の在り方とは?
カーボンニュートラルの達成に向けた方策として導入検討が進んでいる「CCS(二酸化炭素回収・貯留)/CCU(二酸化炭素回収利用)事業」。カーボンマネジメント小委員会の第3回会合では、CCSによるCO2貯留メカニズムやリスクマネジメントの体系等が報告された。
CO2の「海底下貯留」商業化に向けた課題とは? 環境省が関連制度を見直しへ
カーボンニュートラルの達成に向けた方策として導入検討が進んでいる「CCS(二酸化炭素回収・貯留)」。その貯留先の一つとして検討されているのが「海底」だ。環境省では専門の委員会を設置し、今後の海底下CCSに係る海洋環境の保全の在り方や制度見直しについての検討を開始した。
CO2を資源化する「カーボンリサイクル」、日本での実施状況と今後の展望
カーボンニュートラルの達成においては、CO2の再利用など「カーボンマネジメント」の活用が欠かせない。経産省の「資源・燃料分科会」第38回会合では、カーボンリサイクルロードマップやCCS(CO2の回収・貯留)事業展開など、幅広いカーボンマネジメントの現状が報告された。

