2050年の電力需要の想定 電化や省エネはどの程度進むか?:エネルギー管理(5/5 ページ)
2050年の日本の電力需要や、電化率はどうなる見込みなのか――。広域機関の「将来の電力需給シナリオに関する検討会」で、最新の見通しやシナリオが公表された。
自家消費用太陽光発電の推計
検討会の需要想定における「省エネ」には、自家消費用太陽光発電・蓄電池などを含むとしている(ただし、産業部門の自家発は別途検討予定)。
電中研では、2050年時点の家庭部門での太陽光発電の設置容量は、戸建住宅では合計67〜70GW、集合住宅では25〜26GWと推計し、自家消費率30%の場合、310億kWh程度の自家消費量を想定している。
また、デロイトでは、戸建住宅の約5割に太陽光発電を設置、戸建住宅の約4割に水素燃料電池が導入されると想定し、2050年の家庭の自家消費電力を970億kWhと試算している。図11は、デロイトによる家庭部門における基礎的需要の変化、省エネの進展、電化の進展、自家消費電力などの要因による、2050年時点の系統電力需要の変化を示している。
データセンターによる電力需要の増大
今後のデータ流通量の爆発的な増加に伴い、データセンターや情報通信ネットワーク(ルーター・無線基地局)における電力需要も増大すると想定されている。国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)によると、国内データセンターの2050年の消費電力量はModestケースで5,000億kWh、楽観ケースで1,100億kWhと推定されており、さらにネットワーク関連の2050年の消費電力量はModestケースで4,400億kWh、楽観ケースで900億kWhと推定されている。ただし、これらの電力需要の推計については、不確実性が高いと考えられている。
電中研では、2050年度のデータセンター電力需要を930億kWhと想定しており、これは現在の系統需要の11%程度に相当する。ネットワーク関連の消費電力量推計は公開されていない。
国内水素製造、DAC、CCSによる電力需要
広域連系系統の「マスタープラン」では、水素製造による電力需要として2050年度に1,340億kWhを見込んでいる。ただし検討会では、国内水素製造やDAC(CO2の直接空気回収技術)、CCSによる電力需要への影響は、予見性が低いと考えている。
電中研では水素製造について、電中研が作成した再エネ導入シナリオの1つである「受容性重視シナリオ」の再エネ発電量(6,500億kWh)に対して、出力制御率を10%(650億kWh)と仮定し、その電力を水素製造に利用すると想定している。つまりこの場合、余剰電力を水素製造に充てているのであり、純粋な新規需要とは言い難い面もある。
またDACについては、電中研では、2050年のCO2回収量を500万t-CO2、回収効率を500kWh/t-CO2と想定し、電力需要を25億kWhと試算している。電中研では、今後、データセンターや水素製造、DACの電力需要想定の精緻化を検討する予定としている。
以上のように現時点では、データセンターやネットワーク関連、水素製造やDACなどの新規分野において、前提条件の変化次第では、1,000億kWh単位での大きな需要増減が生じ得ることが明らかとなった。水素製造やDACについては、国内再エネ電源導入量次第で変化するため、今後の供給側想定と並行的な検討も必要となる。
また、主に産業分野における自家発自家消費電力は現在1,000億kWh程度であり、今後の燃料価格や政策動向次第では、系統電力への切り替えが進むことも想定される。
検討会では、2023年度内に需要シナリオ案を策定したのち、2024年度には供給力シナリオ及び両者を踏まえた需給バランスの策定や課題分析を行う予定としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
太陽光のFIP/FIT新規認定、「含有物質情報を登録したパネルの使用」を要件に
FIT制度の開始以降、急速に導入が進んだ太陽光発電。政府では将来大量に発生すると見込まれる太陽光発電設備の廃棄・リサイクルの適正化に向けて、新規のFIT/FIPの認定要件に「含有物質情報を登録した太陽光パネルの使用」を加える方針だ。
「COP28」は“進展なし”だったのか? 今後の日本に求められる姿勢を考える
2023年11月末に開催された「COP28」。「具体的な進展は何も見られなかった」と評されることも多いCOP28だが、その中身は一体どのようなものだったのか。本稿ではこのCOP28の内容を振り返るとともに、日本がとるべき今後のアクションについて考察する。
2050年の電力需給バランスはどうなるのか? シナリオ別の試算結果が公表
電力広域的運営推進機関が、日本の中長期的な電力需給の分析を開始。11月に開催された検討会では、複数の企業・団体によるシナリオ別の試算結果が公表された。
