急増する「電力先物取引」、先進企業の活用状況と今後の課題:エネルギー管理(4/4 ページ)
電力調達を行う事業者にとって、重要なリスクマネジメントの手段となっている「電力先物取引」。「電力先物の活性化に向けた検討会」では、各社の先物取引の活用状況や市場活性化に向けた提言などが報告された。
enechain社マーケットプレイスの取引状況
電力等のエネルギーのマーケットプレイスを運営するenechainからは、同社のマーケットにおける取引状況が報告された。同社での取引量は累積750億kWhに上る。
同社マーケットにおける現物とデリバティブ(先物等)の比率は、取引の9割程度が現物であり、それらの取引は11〜3月の年間物商戦時期に集中している。
また、東エリアの取引量は西エリアに比べて約10倍の規模であり、非常に大きな差が生じている。これは、西エリアでは原子力発電の再稼働が進んでおり、太陽光発電の導入量も多いため、平均的な市場価格が安いほか、価格スパイクのリスクが相対的に低いことが、一つの要因と考えられる。
同社マーケット(現物+デリバティブ)における受給期間別の取引商品を見ると、年間物商戦期はターム取引が多く、期中は四半期・月間商品の短期取引が中心であることが分かる。これは、デリバティブだけで見ても同じ傾向である。
また、同社マーケットの参加者数(現物+デリバティブ)は、いずれの属性でも増加傾向となっている。(Hedger:実需を持つ事業者。Trader:実需を持たない事業者。旧一:旧一般電気事業者又はその系列企業。)
平均的に、旧一とTraderの取引回数が多く、流動性の向上に貢献している。
「日本電力市場研究会」による業界横断的な取組
enechainは、フェアで自由な取引環境を実現し、日本電力市場の安定に貢献することをミッションに掲げ、業界横断でフロント・ミドル・バックの課題を幅広く議論する「日本電力市場研究会」を立ち上げ、運営を開始した。現在の参加企業は、旧一般電気事業者:4社、発電/小売電気事業者:8社であり、このうち公開許可企業は、図11のとおりである。
同研究会における議論内容は資源エネルギー庁にも共有を行い、その成果物は業界全体の発展のため広く発信していく予定としている。
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