改正省エネ法を契機に変わる企業対応、省エネ・非化石転換に関する新制度の動向:小売事業者に関する情報開示からDR促進制度の動向まで(5/5 ページ)
改正省エネ法の施行など、カーボンニュートラル実現に向け、企業にも新たな対応が求められている昨今。省エネルギー小委員会の第44回会合では、エネルギー小売事業者から消費者への情報・サービス提供に関する新制度や、エネルギー消費機器のデマンドレスポンス(DR)対応、省エネ法定期報告情報の開示制度の在り方について議論が行われた。
省エネ法における定期報告情報の公開制度の状況
省エネ法ではこれまでも、特定事業者(年間エネルギー使用量1,500kl以上)に該当する約12,000者に対して、エネルギー使用量等に関する毎年の定期報告を義務付けてきたが、企業の同意に基づき、これを一般公開する仕組みを2023年に創設した。
2023年度は、東証プライム上場企業及びその子会社を対象として、試行運用を実施しており、公開を宣言した47社と8つの省庁の情報が今年度末に公開される予定である。2024年度から参加する事業者の情報は、秋頃に速報版を公開する予定である。
本制度は、産業界全体の省エネ・非化石転換・DRの取り組みの底上げに向けて、より多くの事業者の参加が期待されるものである。このため、参加インセンティブの一つとして、省エネ法特定事業者については、本制度への参画宣言を、令和5年度補正予算省エネ補助金の申請時における要件とする。令和4年度補正予算における対象者数は約600者であり、同程度の参画宣言が期待される。
省エネが長く停滞する事業者に対する助言等
省エネ法では、毎年度の定期報告に基づき特定事業者を評価する「事業者クラス分け評価制度(SABC評価)」を実施している。
毎年、Sクラス(優良事業者)が5割強で最多であるものの、省エネが停滞している事業者(Bクラス事業者)も1割〜2割程度あり、Bクラスを継続する事業者が増加傾向となっている。
国はこれまでも、このような事業者に対して注意喚起を行うとともに、一部の事業者に対しては現地調査を行い、取り組みが不十分な場合は指導等を実施してきた。
国全体として一層の省エネが必要であることから、今後は、省エネが長く停滞する事業者(3〜4年連続でBクラス事業者)に対しては、その要因や改善の見通し等について追加的な報告を求め、現地調査において改善に向けた意見交換や助言を丁寧に行うなど、きめ細かな執行を検討することとした。
エネルギー原単位の悪化は、当該事業者のエネルギーコストの増加となっていると考えられるため、日本企業の競争力維持の観点からも、丁寧な支援が期待される。
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