2024年度の再エネ出力制御量の見通しと、出力制御対策の進捗状況:エネルギー管理(4/4 ページ)
資源エネルギー庁が管轄する系統WGで、2024年度の再エネ出力制御の見通しと、出力制御量の低減に向けた対策の進捗状況が公表された。
周波数品質維持のためのLFC調整力確保
電気事業法において、一般送配電事業者は、供給する電気の周波数を、標準周波数に維持することが求められており、周波数維持の指標としては、標準周波数から実測周波数が一定の変動幅に維持された時間の比率(時間滞在率)を用いている。
各一般送配電事業者は、平常時における周波数の調整目標範囲や滞在率を表11のように設定している。
電力広域的運営推進機関は、毎年、「電気の質に関する報告書」を公表しており、同期エリア別の周波数時間滞在率や変動幅0.1Hz以内の滞在実績の推移は、図3のとおりである。
このように、従来は年度単位での実績のみが公開されていたが、系統WGにおいて、月単位の周波数滞在率等(60Hzエリア)が公表され(図4)、再エネ導入量の増加に伴い、全国的に周波数品質が低下傾向にあることが報告された。太陽光発電量の多い春秋には、周波数滞在率の低下が目立つ状況である。
周波数維持に用いられる調整力の一つであるLFC調整力は、エリア需要の2〜3%程度分が確保されてきたが、2024年4月以降は需給調整市場において、二次調整力①として調達することになる。二次調整力①の商品要件では、応動時間5分以内と定めているが、これは上げ調整力のみに適用され、下げ調整力については、応動時間の考え方は統一されておらず、一般送配電事業者各社の運用に委ねられている。
よって周波数品質維持の観点から、下げ調整力についても、下げ幅や応動時間など、一定の要件を定めることや適切な確保量について、広域機関において今後検討が行われる予定である。
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