「需給調整市場」の約定量不足や価格高騰の原因は――エリア・商品別に見る足元の状況:第91回「電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会」(4/4 ページ)
2024年4月から5商品すべての取り引きがスタートした「需給調整市場」。しかし足元では約定量不足や価格の高騰が続いている。資源エネルギー庁の「制度検討作業部会」第91回会合では、エリア別・リソース別の状況が公開された。
市場外調達・余力活用の状況
需給調整市場の週間商品(一次〜三次①)は、前週火曜時点で未達が発生した場合、一般送配電事業者が市場外調達することとしているが、その調達量は現時点、限定的であった(4月1日〜5日,表3の黄色枠部分)。
市場調達・市場外調達後の不足分は、実需給前日15時のタイミングで、余力活用契約電源により補う必要があるが、そもそもBG(バランシンググループ)に十分な余力(※)が存在するかを確認したものが、表3の赤枠部分である(※BGが運転を計画している電源全体から、BGの供給力に活用する量とΔkW約定量(市場・市場外)を除いた余力)。
表3赤枠の総量で見れば、現時点のBG余力は調整力必要量を上回っているものの、高速商品要件を満たすBG余力は、一部エリアで不足していたことが報告されている。
余力活用契約は、起動済み電源の「余力」を活用することが原則であるが、5つのエリアでは調整力を確保するため、電源の追加起動が指令されている。
需給調整市場検討小委員会によると、追加起動を伴う場合、需給調整市場へ自発的に応札するよりも、余力活用契約による追加起動指令を待つほうが、発電事業者の金銭報酬が大きい可能性があり、これが需給調整市場の応札不足の一因と指摘されている。
今後の対応
調整力調達費用の高騰は、託送料金やFIT再エネ賦課金を通じて、最終的には需要家が負担することとなるため、早急な対策が必要とされている。
このため一般送配電事業者9社は、制度検討作業部会の検討を踏まえ、4月30日取り引き分(5月1日受渡分)から当面の間、二次②・三次①の前日追加調達を一時的に中断することを4月26日に公表した。
このような緊急避難的な対策も不可欠な状況であるが、本来的な解決策として、市場応札量の増加とリソース間の競争により、安価なリソースが約定するよう、調整力商品要件の見直し等も行う予定としている。また抜本的な対策として、需給調整市場への制度的な供出義務化に関する検討にも着手する予定としている。
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