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排出量取引制度への参加を2026年度に義務化、その実現に向けた法的課題の論点第1回「GX実現に向けた排出量取引制度の検討に資する法的課題研究会」(1/3 ページ)

企業などが排出する炭素量を取り引きできる「排出量取引制度(ETS)」。現在国内でも試行的に導入が始まっているが、正式な制度化に向け、法的な観点からの整理を行う検討会が設置された。

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 エネルギーの安定供給確保、経済成長、脱炭素の3つの同時実現を目指し、国は2023年5月に、GX推進法(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)を成立させた。同法において「脱炭素成長型経済構造」とは、産業活動において使用するエネルギー及び原材料に係るCO2を原則として大気中に排出せずに産業競争力を強化することにより、経済成長を可能とする経済構造、と定義している。

 同法では、成長志向型カーボンプライシングの導入を謳い、炭素排出に値付けをすることにより、GX関連製品・事業の付加価値を向上させることを目指している。

カーボンプライシングの一つが排出量取引制度(ETS)であり、GXリーグでは、企業の自主的な取組として2023年度から試行的にGX-ETSを開始し、現在これに参加する747社のGHG排出量は国全体の5割以上を占めている。


図1.排出量取引制度の段階的発展のイメージ 出典:GX実行会議

 国はこれまでもGX推進戦略(脱炭素成長型経済構造移行推進戦略)に基づき、排出量取引制度を段階的に発展させる方針を示してきたが、第11回「GX実行会議」では、排出量取引制度の2026年度本格導入に向け、一定規模以上の排出を行う企業の参加義務化や、個社の削減目標の認証制度の創設等を視野に、法定化を検討する方針が示された。

 法定化を進めるためには、排出量取引制度の具体的な制度設計の前提として、排出量取引制度における事業者の義務や排出枠の法的性質等の、法的な論点を前もって整理しておくことが重要である。そこで、すでに諸外国で実施されている排出量取引制度を日本の法体系で考えた場合の法的整理を検討するため、「GX実現に向けた排出量取引制度の検討に資する法的課題研究会」が経産省・環境省共催により設置された。

EU-ETS及び韓国K-ETSの概要

 EUでは、京都議定書により定められた温室効果ガス(GHG)削減目標を達成するための取組みとして2005年にETSを導入し、EUにおける気候変動政策の一つとして数次にわたる制度改正を行い、現在は第4フェーズ(2021〜2030年)を実施中である。

現行のEU-ETSの概要は表1のとおりであるが、後段で韓国K-ETSとの比較において補足説明を行いたい。


表1.現行のEU-ETS概要 出典:GX排出量取引制度法的課題研究会

 また韓国では2010年に、GHG削減に向けた基本枠組みとして「低炭素グリーン成長基本法」を制定し、その主な政策としてGHG・エネルギー目標管理制度を実施、2015年に当該制度を発展させ、排出量取引制度(K-ETS)を導入した。K-ETSは、第1計画期間(2015〜2017年)、第2計画期間(2018〜2020年)を経て、現在は第3計画期間(2021〜2025年)を実施中である。


表2.韓国K-ETS(第3計画期間)の概要 出典:GX排出量取引制度法的課題研究会
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