導入量が鈍化傾向の太陽光発電、2030年以降に向けた課題と見通し:第64回「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」(4/4 ページ)
第7次エネルギー基本計画の策定に向けた議論が本格化するなか、第64回「再エネ大量導入小委」では太陽光発電協会(JPEA)や日本地熱協会などから、太陽光発電や地熱発電の普及拡大に向けた課題や取り組みの状況が報告された。
REASPからの提言
一般社団法人再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(REASP)は、再エネを「増やす」「減らさない」「市場統合と高付加価値化」という3つの観点から、再エネの大量導入及び主力電源化に取り組んでいる。
REASPはJPEAと共同で、地域との共生及び太陽光発電の長期安定電源化の取組として「太陽光発電の健全な運営にむけたベストプラクティスの事例」を作成し横展開に努めているほか、太陽光パネルのリユース・リサイクルに関する事業者の意識調査等を行っている。
またREASPは、第64回再エネ大量小委において、再エネの導入拡大に向けた幾つかの提言を行っている。現在、自治体は再エネ促進区域(ポジティブゾーニング)の設定が可能であるが、導入事例は限定的である。そこで、再エネ促進区域を促進するため、より幅広い自治体における再エネ導入目標設定の義務化やインセンティブの付与(地元自治体の税収増等のメリットの可視化、法人事業税納付等)を提案している。
また、営農型太陽光発電の促進に向けて、地域計画に位置付けられた営農型の一時転用許可を優遇することや、農業経営基盤強化促進事業において地域内の再エネ事業を取り扱うようにする(農地の権利移動や集約における優遇)などの制度改善を提案している。
地熱発電の現状と課題
第64回再エネ大量導入小委では、日本地熱協会(JGA)から、地熱発電の現状と課題が報告された。日本地熱協会会員アンケートによる、今後の新規地熱発電開発の見通しは表3のとおりである。
地熱発電は、規模の大きな案件の場合、開発リードタイムが非常に長いことが特徴であり、調査開始から運開まで16年を要する事例が報告されている。
地熱発電の開発に長期間を要すること、また計画よりも遅延することの理由としては、地域住民等のステークホルダーの理解を得ることの難しさが指摘されている。地域理解が得られず、調査に取り掛かれない地点もあると報告されている。
また、地熱発電の適地である東北や北海道は積雪のため、12月から5月まで作業が出来ず、通常の約2倍の建設期間を要することも課題である。最近では、資材価格や人件費の上昇により掘削コストが増加したため、調査井を1〜2本掘削し、それ以降の調査を断念する事例も発生している。
地熱発電の開発にあたっては、地熱資源の十分な評価を行い、資源量に見合った開発規模を判断することが重要である。このため日本地熱協会は、JOGMEC先導的資源量調査拡充(噴気試験実施等)による有望地点の発掘を要望している。これにより、初期調査リスクの低減とリードタイムの短縮が期待される。
再エネ大量導入小委では、今後、他の電源種の事業者団体や金融機関等に対して、ヒアリングを実施する予定としている。
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