再エネ大量導入の時代、地域間連系線・地内送電線の運用容量はどうなるのか?:第1回「将来の運用容量等の在り方に関する作業会」(4/4 ページ)
再エネの大量導入や出力制御の増加など、今後さらなる変化が予想される国内の電力系統。安定的な電力供給を実現するために定められている、地域間連系線及び地内送電線の「運用容量」は今後どうなるのか。電力広域的運営推進機関は専門の作業部会を新設し、将来に向けた検討を開始した。
「系統特性定数」に関する前提条件の変化
図7の中部関西間連系線など、現在、周波数維持が制約要因となる連系線の運用容量は、の計算式により算出している。
ここで「系統特性定数」とは、電源脱落率[%MW]と周波数変化量[Hz]の関係から求まる「周波数が1Hz低下する電源脱落率」を表しており、この系統特性定数の傾きは、周波数低下時に自端制御で出力上昇する発電機のガバナフリー機能(以下、GF)が大きく関係している。
- 東北エリアの系統特性定数:8.0%MW/Hz(過去実績より算出)
- 中西エリアの系統特性定数:5.2%MW/Hz(シミュレーションにより算出)
従来、中西エリアの系統特性定数は、エリア需要の3%程度のGF容量確保を前提としており、実際にもこれを確保してきた。ところが2024年度から開始された需給調整市場において、一次調整力(GF)の平常時必要量は過去の応動実績から算出しており、系統特性定数の維持は必ずしも考慮要素としていない。
また、2025年度から一次オフライン枠の応動要件が緩和される予定であり(平常時のみ対応し、異常時には対応なし)、この一次オフライン枠の導入量次第では系統特性定数への影響が懸念される。
作業会では、調整力調達の在り方が変わる中、そもそも系統特性定数が今後も必要か否かの整理も含め、周波数低下側/上昇側、中西エリア(60Hz)/東エリア(50Hz)の4象限それぞれについて検討を行う予定としている。
運用容量における「フリンジ」の取り扱い
地域間連系線を流れる電力は、細かな需要変動や発電機制御の遅れ等により、連系線の指令(計画)と潮流の実績は完全には一致せず、瞬時的な差分(フリンジ)が生じる。
現在、同期安定性・電圧安定性の限度値により運用容量が決まる連系線は、平常時には一瞬たりとも安定限界潮流を超過させないといった考え方に基づき、安定限界潮流からフリンジ分(計画値と実績値の差分の3σ)を減算して、運用容量を算出している。
従来、地内では系統混雑が発生しないよう送電設備を形成してきたため、地内では系統混雑が発生せず、エリア内で確保した調整力ΔkWは、制限なく活用することが出来た。
ところがノンファーム型接続の適用に伴い、今後は地内でも不特定多数の箇所において系統混雑が発生すると予想され、ΔkWの発動制限が生じると想定される。
このようなエリア内でのΔkW発動制限を回避するためには、ΔkW確保エリアを細分化することや、地域間連系線同様に地内にもΔkWマージンを設定する方法等があり得るが、非効率と考えられる。
また将来の同時市場においては、エリア単位ではなく広域的に必要なΔkWを算定し、必要量を低減する方向性が示されている。これにより、ΔkW確保エリア内の混雑対応(発動制限ΔkWへの対応)としては、地域間連系線と地内送電線の明確な区分けが無くなるため、同時市場においては、地内送電線でも地域間連系線と同様にフリンジで対応する方向性が示されている。
今後、地域間連系線と地内送電線で考え方を統一するに際しても、まずは地域間連系線のフリンジの取り扱いに見直しの余地がないかを再確認した上で、技術的な対応可否について、深掘り検討する予定としている。
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