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注目を集める垂直設置型の太陽光発電、ソーラーシェアリング視点で考える課題と提言ソーラーシェアリング入門(67)(2/2 ページ)

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)について解説する本連載。今回は昨今注目を集める垂直設置タイプの太陽光発電と、ソーラーシェアリングとの関係について解説します。

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太陽光発電における垂直設置型への誤解と普及に向けた課題

 近年、こうした垂直設置型について駐車場や農地における設置が実証規模で進んでいますが、コストを含め日本国内における設置については技術的な検証が途上という印象があります。

 一つ、世間一般における誤解を指摘しておくとすれば、太陽光発電の垂直設置は営農型太陽光発電に特有/独特のものという捉えられ方をしている印象もある点です。本来は、例えば「屋根設置」のように太陽光パネルを設置する一つの方式として捉えて、「垂直設置」という技術が確立された後に、それを駐車場なり空き地なり農地なりにどう普及していくかという順序で進められるべきですが、どうにもメディアにおける取り上げられ方を見ていると、営農型太陽光発電あるいはソーラーシェアリング、そして農地における独特な設置方式という印象が先行している感があります。

 個人的な感想としては「営農型太陽光発電というよりソーラーシェアリング」という印象が強く、これは垂直設置型が「BIPVを含め太陽光発電の設置場所の多様化」に貢献するもののという色合いが濃いように感じられるからです。

 農地の場合は、営農型太陽光発電として設置する場合は「最低地上高が2m以上」という基準が垂直設置に対して一部緩和されていいます。しかしFIT制度下で行われてきた柵塀設置の基準緩和については、2024年4月の太技省令・太技解釈の改正に際して「機械器具を地表上2m以上の高さに、かつ、人が通る場所から容易に触れることのない範囲に施設すること」が柵塀設置を行わない場合の基準として定められています。

 昨今農地に営農型太陽光発電として導入されている垂直設置はこれらの基準を満たしていないと見られる事例が多く、今後フェンス等の設置が必須となるか、あるいは高さ2m以上まで太陽光パネルの位置を引き上げるか、はたまたそれ以外の方策が見いだされるのかといった対応が必要になると考えられます。

 他にも営農型太陽光発電で言えば、これまではフェンスの設置を行わないでも良いとされるかわりに、農作業者の安全性確保を含めた設備設計上の配慮にも工夫が重ねられてきました。加えて、農作業中の切断事故などを予防するための電気配線、農業機械などの設備に対する衝突事故防止や、万が一の衝突時の倒壊を防ぐための想定、農村景観との調和を図るための設計などの積み重ねもあります。

 垂直設置型は国内において共通の設計ガイドラインなどが未策定ということもあり、その中でも農地での導入が先行していることから、関係者による早急な課題整理の対応が必要でしょう。

求められるガイドライン整備

 JPEAがPV OUTLOOKにおいてこれだけ垂直設置を重視する姿勢を示した以上、まず地上設置型太陽光発電システムの設計ガイドライン、そして特殊な設置形態の太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン等と同様に、垂直設置の太陽光発電システムに対しても技術検証・評価を行っていき、さまざまな設置場所に対応した設計・施工ガイドラインを整えていくべきでしょう。

 その後に、BIPVや非住宅建物・地上設置(農地を含む)への普及を図っていくという段階になると考えます。垂直設置型もBIPVと農地を含む地上設置型では異なった課題を抱えることになるでしょうから、一朝一夕では整理がつかないでしょう。

 前回の記事で営農型太陽光発電における農業・農村との向き合い方でも言及しましたが、太陽光発電業界を代表する業界団体の示すビジョンですから、これだけ垂直設置型のポテンシャルを押し出すのであれば、同時に「今後具体的にこのように我々は行動していく」という方向性を最初から強く打ち出すべきでした。

 少なくとも、過去のFIT制度下における太陽光発電の乱開発に社会の厳しい目が向けられており、森林伐採によるメガソーラー開発や、不適切な営農状況の営農型太陽光発電などが残念ながら多数行われてきました。それが「再生可能エネルギー発電事業の事業規律の強化」という形で、近年の再エネ政策議論における重要テーマとなってきたことを踏まえれば、新たな設置形態である垂直設置型はそれらの前例からの反省に立って、太陽光発電業界としての技術基準やポリシーの策定をまず先行させる姿勢が不可欠ではないでしょうか。

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