導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム、現状のコストと収益性の見通しは?:第3回「定置用蓄電システム普及拡大検討会」(4/4 ページ)
再エネ電源の大量導入を背景に、日本でも電力系統への導入が加速している定置用蓄電池。その普及拡大や市場創出を目指す資源エネルギー庁の「定置用蓄電システム普及拡大検討会」では、蓄電システムのコスト構造や収益性についてのレポートが公開された。
再エネ併設蓄電システムの収益性試算
FIP制度では、出力制御時間帯(市場価格が0.01円/kWhとなるコマ)のプレミアムを、当月の出力制御時間帯以外のコマに割り付けることにより、出力制御時間帯から出力制御時間帯以外に、発電/供給をシフトするインセンティブを与えている。
このようなFIP電源に蓄電システムを併設することにより、発電した再エネ電力を(昼間の0.01円/kWhではなく)市場価格が高い朝夕の時間帯に売電した上で(kWhのタイムシフト収入)、プレミアム収入(調整前プレミアム+調整後プレミアム)を得ることが可能となる。
先述の図3のように0.01円コマが最多である九州エリアにおいて、FIP太陽光発電(基準価格:15円/kWh)に蓄電システムを併設(20年間運用)すると仮定した場合の収益性は、図7のように試算される。売電価格のプロファイルは20年間一定と仮定している。建設費(CAPEX)が6万円/kWh程度以下である場合には、一定の収益性(IRR)が見込まれる。
蓄電システムの収益性予見の課題
今回の試算では、系統用蓄電システム・再エネ併設蓄電システムのいずれも、売電はすべてJEPXスポット市場価格で行うこと(現在の価格が20年間続くこと)を前提としているが、実際には将来の市場価格を予見することは困難である。また、蓄電池システムの導入増加により、やがては昼間帯0.01円コマの減少や点灯帯での市場価格低下が進み、「値差」が縮小していくことも予想される。
蓄電事業の収益性を予見することが困難であることは、金融機関によるファイナンスの組成を困難としているとの課題も指摘されている。小売電気事業者等と相対契約を結ぶことにより、安定的な収益確保も可能となるが、現時点、このようなオフテイカーは少数である。
長期脱炭素電源オークション(応札年度:2023年度)では、蓄電池の応札容量が 455.9万kWに上るなど、このような制度に対する事業者の期待が高いことが明らかとなった。今後も技術中立的であることを前提しつつ、収益の予見性を確保する制度の活用が期待される。
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