バイオマス発電所のCO2排出量を「マイナス」に、中国電力らがCCS技術を導入へ:エネルギー管理
山口県防府市のバイオマス発電所に大規模なCO2の分離回収・貯蔵システムの導入に向けた検討がスタート。実現すれば正味としてCO2排出量がマイナスになる「ネガティブエミッション」の達成が見込めるという。
中国電力、住友重機械工業、東芝エネルギーシステムズ、日揮グローバルの4社は、中国電力グループのエネルギア・パワー山口が運営する「防府バイオマス発電所」(山口県防府市)において、CO2分離回収システムなどの導入に向けた検討を開始したと発表した。実現すれば正味としてCO2排出量がマイナスになる「ネガティブエミッション」の達成が見込めるという。
今回の取り組みは、防府バイオマス発電所にネガティブエミッション技術「BECCS(Bioenergy with Carbon dioxide Capture and Storage)」の導入を目指すもの。BECCSとは、バイオマスの燃焼により発生したCO2を回収・貯留することにより、大気中のCO2を削減する技術だ。
同発電所は出力11万2000kWの発電所で、2019年7月から稼働を開始している。現在、約45%が石炭、残りの約55%がカーボンニュートラル燃料である木質系バイオマスを燃料として利用している。ここにBECCSを導入することにより、排出されるCO2の80%に相当する約50万t-CO2/年を回収できる見込み。これにより、トータルでネガティブエミッションの達成が可能になる見通しだという。
今回の技術導入は、中国電力がエネルギー・金属鉱物資源機構より令和6年度「先進的CCS事業に係る設計作業等」に関する委託調査業務を受託したことに伴う取り組みとなる。4社は2025年2月末まで検討を行い、2030年度頃までにCCS設備の導入を目指す方針だ。
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