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実態とのかい離が懸念される「広域予備率」、低下時の供給力追加策を検討へ:第102回「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」(4/4 ページ)
電力系統の安定性を測る指標となっている「広域予備率」だが、実態とのかい離が懸念されており、必要な供給力を提供する事業者や需要家の混乱を招いている。そこで電力広域機関ではその算定方法の見直しや、予備率の低下時における供給力追加策を検討中だ。
週間・翌々日の広域予備率の算定見直し
2024年度に入り、週間・翌々日計画時点の広域予備率は低く、翌日計画や実需給断面に向けて広域予備率の数値が上昇するという現象が、一部のエリアで生じている。これは、需給調整市場における調整力調達不足がその一因であると考えられている。
このため広域機関では、週間・翌々日の広域予備率の算定方法を見直す検討を行い、当面の対応策としては、「一般送配電事業者が、翌日・当日の調整力必要量相当を(週間・翌々日計画時点で)供給力に計上する」こととした。
具体的には、一次調整力〜三次調整力①については複合約定ロジックで調達することから、複合商品必要量(1σ相当値)を計上する。他方、三次調整力②は、翌日の気象条件(FIT再エネ出力予測値)に応じて必要量を定めるため、週間・翌々日計画時点では必要量が定まらない。このため代替策として、1σ相当必要量テーブルを用いて、当該時間帯の平均値を計上することとした。
週間・翌々日計画の広域予備率算定の見直しにより、週間〜当日までの広域予備率のイメージは図9のようになる。
今回の運用見直しに際しては、一般送配電事業者においてツール改修等の準備期間が必要であるため、2025年1月中の運用開始を目指すこととした。また恒久対策については、需給調整市場の今後の取引スケジュール変更や追加供給力対策の方向性を踏まえ、検討を行う予定としている。
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