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鉄鋼業界の脱炭素化へ 「グリーン鉄」の市場創造に向けた課題と展望第2回「GX推進のためのグリーン鉄研究会」(2/4 ページ)

産業界の中でもCO2排出量の削減ハードルが高いとされる鉄鋼業界。さまざまな企業が低炭素な「グリーン鉄」の製造を進めているが、課題となるのがその市場創出だ。経産省が主催する「GX推進のためのグリーン鉄研究会」では、需要家への情報発信の在り方や、市場拡大に向けた課題について検討を開始した。

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脱炭素化に向けた粗鋼生産の改革

 現在、鉄鋼の生産方法としては、鉄鉱石をコークスで還元する高炉法のほか、スクラップを原料とした電炉法や、鉄鉱石を天然ガスや水素で還元して電炉で精錬する直接還元法がある。

 コークスを用いた高炉法では、自然界に酸化物として存在する鉄鉱石から酸素を除去(=還元)することに伴い、鉄1トンの製造から約2トンのCO2が不可避的に発生する。


図2.鉄鉱石の還元によるCO2発生 出典:GX 推進グリーン鉄研究会

 このため国内外で粗鋼生産の脱炭素化に向け、高炉で使用する石炭の一部を水素等に転換する「水素還元製鉄」や、石炭を使わずに水素だけで鉄鉱石を還元する「直接還元製鉄」、高級鋼の製造が可能な「大型電炉」などの様々な技術開発が進められている。


図3.粗鋼生産脱炭素化の代表的な手法 出典:GX 推進グリーン鉄研究会

高級鋼が製造可能な大型電炉

 電炉法は、一度還元された鉄スクラップ等を原料として用いるため、現在でも鉄1トンあたりCO2量が約0.5トンと相対的に低排出であり、今後の電力排出係数の低下に伴い、さらなるCO2排出低下が期待される。よって、まず2030年に向けては高炉からの電炉転換が脱炭素化の主要な選択肢とされている。

 これまで電炉では、原料スクラップに含まれる不純物や高炉との製法の違いにより、品質面が課題とされてきたが、自動車外板等の高級鋼の製造が可能となる技術開発が進められている。

 高炉メーカーによる電炉転換は2029年を目途に立ち上がり、2030年以降は国内のスクラップ需要は発生量を上回り、スクラップが不足すると推計されている。このため、電炉法だけではすべての鋼材需要を賄うことは出来ず、今後も鉄鉱石からの還元製鉄が一定量は必要と考えられている。

 なお、高炉から大型電炉への転換にあたっては、使用電力量の増加と同時に、高炉プロセスからの副生ガスがなくなるため、当該製鉄所の系統電力需要は数十万kW規模で増加すると考えられている。


図4.国内スクラップ需給バランスの見通し 出典:日本製鉄

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