2030年代に全新車をバイオ燃料対応に バイオエタノール導入拡大案の詳細:第17回「脱炭素燃料政策小委員会」(2/4 ページ)
運輸部門の脱炭素化に向けて、経済産業省は2030年代早期に全新車をバイオ燃料対応とする方針を固めた。本稿ではこの自動車燃料へのバイオエタノールの導入拡大に向けた方針案の概要と、同時に議論されている次世代燃料の環境価値認証・移転制度に関する検討の方向性について紹介する。
世界のバイオエタノールの需給状況
現在、世界の60カ国以上でバイオエタノールの利用が政策的に措置されており、英国等ではE10(エタノール10%混合ガソリン)の導入が義務化されるなど、混合率を引き上げる方針を示す国が増加傾向にある。また、ガソリン需要量に占めるバイオエタノールの比率は、ブラジルでは45%に上る。
現時点、バイオエタノールの生産・消費・輸出いずれも米国とブラジルが中心であるが、大半を自国内で消費しており、輸出向けは生産量の1割程度に留まる。
現時点、日本国内でのバイオエタノールの生産量及び自給率はほぼゼロであるため、今後の需要拡大に向けては、ブラジルや米国、アジアなどのバイオエタノール生産国と安定的なサプライチェーンを構築する必要がある。当面はバイオエタノールの大半を輸入に頼らざるを得ないが、原油輸出国との重複は少ないため、エネルギーセキュリティの向上に資するものと考えられる。
バイオエタノールとETBEの比較
世界的には、ガソリンへのエタノール直接混合方式が主流であるが、これまで日本ではETBE混合方式を採用してきた。これは、エタノール混合ガソリンは水層(水+エタノール)と油層(ガソリン)に分離しやすく、サプライチェーン全体で水分混入対策が必要であるほか、一定濃度以上のエタノール混合は自動車やSS設備の部材を腐食させるといった技術的課題があるためである。
他方、ETBEは製造コストがやや高いことや、ETBEの原料のイソブテンは、石油化学製品等の副産物であるため簡単に増産することができないといった課題がある。このため、今後バイオエタノールを導入拡大していく上では、バイオエタノール混合比率を引き上げやすい「直接混合」方式についても、取り扱っていくことが有効と考えられる。
なお、バイオエタノールの導入を促進するため、これまでもガソリン税(揮発油税及び地方揮発油税:53.8円/L)の課税標準から、混合したバイオエタノールの数量分を控除する特例が措置されている。
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