洋上風力発電の入札制度に仕様変更、迅速性や供給価格の評価方法を見直しへ:「洋上風力促進WG」(第27回〜29回)(5/5 ページ)
他の再エネ電源より初期投資額や事業規模が大きい洋上風力発電。インフレなどの市場環境変化の影響を受けやすく、事業撤退などのリスクが懸念されている。こうした状況を踏まえ、国は価格調整スキームの導入や供給価格の評価方法の変更など、入札制度に関連する制度を見直す方針だ。
価格調整スキーム等を適用する対象
今回の制度見直しでは、価格調整スキーム導入のほか、入札保証金の金額・没収方法の変更やIRRの引下げなどがセットで、洋上風力発電の確実な完遂を目指すものとなっている。
このため、次回第4ラウンド以降の応札・落札事業者については、これらの措置の選択的な適用は認めず、一律に適用することとする。他方、例えば、事業遅延に伴う保証金の没収規定が無かった第1ラウンドの選定事業者に対して、今回の措置を強制的、一律に適用することは現実的ではない。
よって、第1〜3ラウンドの選定事業者(第3ラウンドは事業者選定中)については、今般の制度見直しをセットで受け入れる事業者に対してのみ、当該見直し後の措置を適用することとする。
この場合、公募の公平性や国民負担への中立性を確保する観点から、価格調整スキームについては、当該措置適用後の将来の物価変動のみがFIT基準価格/FIP調達価格に反映されることとなる。
供給価格評価方法の見直し
現在の再エネ海域利用法の公募選定においては、「1.洋上風力発電の長期性、安定性、効率性に関する多くの要素は最終的には価格に反映されること」「2.供給価格は客観的な評価が可能であること」「3.再エネの最大限の導入と国民負担の抑制の両立」を図る観点から、「供給価格」(応札価格)を最も重要な要素と位置付けており、全体240点のうち、120点を供給価格、残る120点を様々な事業実現性評価に配分している。
現在の価格評価算定式は、「供給価格点=(公募参加者の最低供給価格/提案者の供給価格)×120点」としており、FIP制度の下で再エネ賦課金負担に差が生じず、基準価格が市場価格を十分に下回る水準として、ゼロプレミアム水準(3円/kWh)が設定されている。
この算定式では、1事業者でもゼロプレミアム水準での入札があった場合には、次点応札者との供給価格点差が非常に大きくなってしまうため(図6のオレンジ色の曲線)、事実上、他の事業者もゼロプレミアム水準で入札しなければ落札の機会を失う、という課題が生じていた。これは、オフテイカーとの相対契約締結が事実上不可欠であることを意味し、そのような相対契約を確保できない事業者は、応札に参加せず、多様な洋上風力導入のブレーキにもなり得るものである。
このため洋上風力促進WG事務局では、以下の図7のように供給価格の評価方法を見直すこととした。まず、新たに「準ゼロプレミアム水準」を設けることした。これは、現行のゼロプレミアム水準(3円/kWh)でなくとも、ある程度安価な入札であれば、国民負担の抑制効果はあるという考え方に基づくものである。
新たな「準ゼロプレミアム水準」は、過去3年間の風力発電プロファイル市場価格(全国値)の平均値14.94円/kWhを参照し、「14円/kWh」とする。
図7のように、ゼロプレミアム水準と準ゼロプレミアム水準の間の傾き(直線)は緩やかとなるため、今後は、価格での次点応札者も事業実現性評価点による挽回が可能になると期待される。
ゼロプレミアム案件の容量市場への参加
現行制度上、FIT/FIP案件は、調達価格/基準価格によりすでに固定費が回収されていることから、FIT/FIP制度の適用期間中は、容量市場への参加が認められていない。他方で、再エネ海域利用法公募(FIP制度適用)のゼロプレミアム案件は、FIP制度の適用期間中に容量市場への参加を認めたとしても、バランシングコスト相当分のFIP交付金を除き、固定費二重回収の問題は生じない。
このため、再エネ海域利用法公募によるゼロプレミアム案件は、バランシングコスト相当分のFIP交付金を受領しないことを条件として、容量市場への参加を認める方向性が示された。
事業者選定済みの第2ラウンドでは、ゼロプレミアム案件は合計137.4万kWに上る。風力発電(東北エリア)の2028年度向け容量市場メインオークション用調整係数は約32.7%であり、洋上風力事業者も、ある程度の容量収入が期待できるため、今後は容量市場へ参加する事業者も現れると考えられる。
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