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水素関連市場で台頭する中国勢――グローバル水素市場の動向と日本企業の現在地連載「日本企業が水素社会で勝ち抜くための技術経営戦略」(1)(1/3 ページ)

脱炭素社会に向けて世界的に技術開発が加速する水素関連市場。本連載ではグローバルに競争が激化する同市場において、日本企業が採るべき戦略について考察する。初回となる本稿では、足元の日本市場とグローバル市場の動向、そしてその中における日本企業の位置付けを整理する。

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 脱炭素社会を実現する上で、大きな鍵を握ると見られている水素。「2030年」が温室効果ガス削減目標の一つの大きなマイルストーンとして設定される中で、多くの国が水素関連市場の創出を急いでいる。

 技術開発やイノベーションの推進、規制や法制度の議論、そしてインフラ整備を同時並行で進めるという、まさに「走りながら考える」状況である今、日本企業が水素領域でビジネスチャンスを獲得していくためには、スピードを意識した戦略と実行が非常に重要であると考える。

 本連載では、グローバルにおける水素関連市場の動向と日本企業の位置付けを整理した上で、同市場で勝つために必要な戦略について考察する。そして最後には、グローバル市場においていかにシェアを獲得していくかの方策について論じたい。

現状の支援制度から欠落している論点

 2024年10月23日に水素社会推進法が施行され、国内の水素関連事業が本格的に始動することとなった。同推進法に基づき、低炭素水素等サプライチェーンの構築事業に対して助成金を交付する「価格差に着目した支援(以下「価格差支援」)」および「拠点整備支援」の実施も決まり、価格差支援は同年11月22日に申請受付が開始された 1

 水素社会推進法は、国内の脱炭素化が難しい分野におけるグリーントランスフォーメーション(GX)の推進を目的としており、価格差支援や拠点整備支援では、消費地が国内となる事業に対し助成を行う。一方、世界的な水素需要トレンドを日本企業としてどのようにビジネスチャンスとしていくかは、もう少し議論が必要であると筆者は認識している。

 価格差支援に採択されれば、コスト削減の努力をせずとも15年間安定した収入が一定程度約束されるが、この間に確実な技術革新とスケールアップ、それに伴うコスト低減に取り組む必要がある。つまり15年後「ふたを開けてみたら日本が水素領域で国際競争力を持たない」といった事態は避けねばならないと筆者は考える。また、サプライチェーンの海外依存は、国際競争力のみならず国の経済安全保障上のリスクともなり得ることは、半導体や蓄電池の分野でわれわれが経験してきたことである。

1.拠点整備支援については2025年初旬に公募開始の予定。

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