合成燃料「e-fuel」の普及促進へ GHG排出基準や環境価値認証・移転制度の検討状況:第3回「合成燃料(e-fuel)の導入促進に向けた官民協議会」(4/4 ページ)
運輸部門の脱炭素化への貢献が期待されている「合成燃料(e-fuel)」。その普及促進に向けた施策を検討する「合成燃料(e-fuel)の導入促進に向けた官民協議会」の第3回会合では、国内外における合成燃料の技術開発の状況や、環境価値認証制度等の検討状況が報告された。
次世代燃料の環境価値認証・移転制度
合成燃料・バイオ燃料といった次世代燃料の製造コストは当面高いため、需要を拡大するためには、その環境価値を金銭的価値として評価することが重要となる。
仮に、合成燃料によって生み出されたGHG削減量をカーボンクレジット化する場合、クレジット価格:10,000円/トン-CO2と仮定すると、17円/L程度のグリーンプレミアムを持つと試算される。
また、次世代燃料の導入初期はその供給量が少量と見込まれる中で、環境価値を持つ燃料そのものを物理的に需要地まで届けることには非効率性があるため、環境価値を証書のように分離して移転する仕組みについても検討が求められている。
今後、次世代燃料官民協議会では「環境価値認証・移転制度検討タスクフォース」(環境価値TF)を設置し、環境価値認証・移転制度の詳細について検討を行う予定としている。
自動車用燃料(ガソリン)へのバイオエタノールの導入拡大
現時点、合成燃料(e-fuel)の商用化時期は2030年代前半を目標としているが、その実現を待つだけでなく、速やかに液体燃料の脱炭素化を進める必要がある。このため、「合成燃料(e-fuel)の導入促進に向けた官民協議会」は「次世代燃料の導入促進に向けた官民協議会」と名称を変更し、合成燃料だけでなく、バイオ燃料も含めた検討を行うこととした。
液体燃料のうち、自動車用燃料(ガソリン)についてはバイオエタノールが使用されており、日本では、バイオエタノールを加工したETBE(エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)をガソリンにブレンドして使用する方法を採用してきた。
また日本では実質的に、E3(エタノール3%混合ガソリン)水準以下の燃料が使用されているが、世界の多くの国では、バイオエタノールの直接混合や、E10以上の高い混合率の燃料が使用されている。
これらを踏まえ、脱炭素燃料政策小委員会では、ガソリンへのバイオエタノール導入拡大に向けた方針(案)として、2030年度までに、一部地域におけるバイオエタノールの「直接混合」方式も含め、すでに規格の定められているE10ガソリンの供給開始を目指すこととした。
また速やかに、新たなE20ガソリン燃料規格や認証制度を整備するとともに、車両メーカーでの検討を進め、2030年代のできるだけ早期に、乗用車の新車販売におけるE20対応車の比率を100%とすることを目指す。これにより、E20対応車が十分に普及したと想定される2040年度から、E20ガソリンの供給開始を目指すこととする。
官民協議会は新たに設置するタスクフォースにおいて具体的な取り組み項目の検討を進め、2025年5月頃に「ガソリンへのバイオエタノール導入拡大に向けたアクションプラン」を策定・公表する予定としている。
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