日本企業が水素市場で勝つための3要素――過去の失敗から何を学び、どう生かすべきか?:連載「日本企業が水素社会で勝ち抜くための技術経営戦略」(2)(3/4 ページ)
グローバルに競争が激化する水素市場において、日本企業が採るべき戦略について考察する本連載。第2回となる今回は、蓄電池や太陽光パネル、半導体など、過去のケースを振り返りながら日本企業が水素市場で勝ち抜くためのアプローチを考察する。
日本企業が国際競争で勝ち抜くための3要素
これまでに挙げた過去の事例を参考にした際、日本企業が国際競争に勝つためには以下3つの要素が重要であると筆者は考える(図1)。以降ではこの3要素について詳しく解説する。
要素1:社会実装のスピード
昨今欧米の企業では “China Speed”というキーワードが当たり前に使われている。これは中国企業による社会実装の速さを表現した言葉だ。あるウェビナーにおいて米国大手テック企業の中国駐在員がChina Speedについて言及していた。その内容は、同社が中国の自動車OEMメーカーと先進テクノロジーを搭載した自動車の生産を協議したところ、わずか12カ月後には市場投入するという計画がまとまった。一方、日本企業と同じ内容を協議した際、同企業からは2029年頃にこの技術の導入を検討したいとの返答があったというものだ。
その頃には既に中国の技術がグローバルに出回っているのではないか。中国市場のタイムリーな動向を把握することは、世の中のスピードを理解することのみならず、自社の強みや中国企業との差別化要素を把握する上でも必要な戦略と考える。日本企業においても“China Speed”の重要性は認識されはじめており、パナソニックホールディングスの楠見社長も「China Speedはグローバルで戦っていく上で必須のスピード」と発言している。
スピードを実現する手段は、個社事情により戦略が変わってくるはずであるが、その一つとしてデジタルの活用があると考える。水素事業においても、デジタルツインを活用した設計、運転期間の最適化、故障とパフォーマンスへの影響の余地等が、徐々に注目され始めている。実際にこのようなデジタル技術は欧州を中心とした洋上風力では既に活用されている(図2)。最適化のみならず、データドリブンのプラント運営を行うことは、金融機関からの資金調達においても役立つというメリットも考えられる。
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