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日本のエネルギー政策の方向性は? 第7次エネルギー基本計画のポイント (2/4 ページ)

2月18日に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」。2040年に向けた中長期のエネルギー政策の方向性や見通しをまとめた同計画について、本稿ではそのポイントを解説する。

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2040年度エネルギー需給の見通し(2040年度エネルギーミックス)

 これまでのエネルギーミックスは、蓋然性の高い数値を積み上げる方式により策定していた。しかし第7次エネ基では、2050年カーボンニュートラルや2040年度までにGHGを73%削減という目標達成のため、バックキャスト的な手法を採用するという大きな転換を行った。

 また、2040年度エネルギー需給の見通し(2040年度エネルギーミックス)は、単一の前提ありきではなく、様々な不確実性が存在することを念頭に、複数のシナリオに基づき、幅を持った見通しとしている。


表1.2040年度エネルギー需給の見通し 出典:第7次エネルギー基本計画

 省エネの徹底と電化の推進により最終エネルギー消費量の減少が見込まれることもあり、2040年度のエネルギー自給率は3〜4割程度に改善すると想定している。日本のエネルギー自給率は1960年代後半以降、ずっと1〜2割程度であったので、約70年ぶりの高い自給率の達成が見込まれる。この点でも、第7次エネ基は画期的な内容となっている。なお、ここでは原子力も国産エネルギーとしてカウントされている。

 国の「2040年度エネルギー需給の見通し」には、具体的な電化率の記載は見当たらないが、同見通しで参考とした地球環境産業技術研究機構(RITE)資料では、2040年の電化率は38〜44%であることが示されている。2023年度の電化率(最終エネルギー消費に占める電力の比率)は27.6%であり、今後の急速な電化の進展が想定されている。

エネルギー需給見通しで用いられた5つのシナリオ

 2050年カーボンニュートラル実現に向けては、ペロブスカイト太陽電池や浮体式洋上風力、水素・アンモニア、CCUSなど、現時点では社会実装が進んでいない革新技術の普及拡大が不可欠である。ただし、現時点で2040年度における技術動向を確度高く見通すことは困難であるため、国は表2の5つのシナリオを設定し、2040年度のエネルギー需給に関する分析を実施した。


表2.5つのシナリオの概要 出典:「2040年度エネルギー需給見通し」に筆者加筆

 シナリオ①〜④はいずれも、新たなNDC(国が決定する貢献)のGHG削減目標(2040年:▲73%)と整合的である(エネルギー起源CO2では▲70%。いずれも2013年度比)。

 シナリオ⑤は、技術開発等の不確実性に備えたバックアップシナリオとして設けられたものであり、エネルギー起源CO2排出量は▲56%に留まると試算されている。

 「エネルギー安定供給」、「経済成長」、「脱炭素」の同時達成というGX2040ビジョンを実現するためには、脱炭素に伴うコスト上昇を最大限抑制していくことが不可欠である。

 このためシナリオ分析は、以下の条件を満たすかたちで実施された。

  • エネルギー需給の全体を対象として、コスト最適化分析を行うこと
  • 脱炭素を進めつつも、最大限の経済成長を目指すこと(経済活動量などを最大限維持していること)
  • 海外との相対的なエネルギー価格差を踏まえた評価が可能となること

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